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近付く終幕 13
殻で覆われた心を剥き出しにするため、喪失はこれ以上なく効果を発揮している。一人で立てるかどうかの強度試験。これまで縋ってきたモノを失って、なお人で在れるのか。
子供時代の終わりとは、多分そういうことで。
「会長、ありがとうございました」
唐突な感謝。
一日と少しの関係に、彼女は微笑みながら別れを告げる。
「冗談じゃない。感謝するのは俺の方だ」
「いいえ、私こそです。妬ましいぐらいの光を、強さを見せていただきました。……残念ながら、私に同じことは出来ませんけど」
「――」
「そろそろ追手が来ると思います。由利音さんと一緒に逃げてください」
「フェイは?」
「……質問はちょっと、困りますね」
逆説的に、答えられない愚行を犯そうとしている。