近付く終幕 12
「私は間違っていた。妹の未来がないことを知りつつ、自分のためだけに彼女を生かしたんです。一人になるのが怖かったから。妹のためだと、ずっと自分を騙してきた」
「……誰だって、家族には死んでほしくないだろ」
「病院から一生出られなくとも、ですか?」
試すような問い。――条件反射で現れたのは、解答ではなく沈黙だった。
まともな人間には戻れない、癒しようのない身体。そんな状態で生きて、死んでいないと言えるのか。希望が潰えていたのは、最初から分かっているのに。
フェイの質問から導かれる解答は、どこまでも真実で残酷だ。
そのエゴ、利己を良しとする人間もいるだろう。が、彼女には無理だ。妹のため、を行動原理に据えている彼女には。
「私にとって、妹は生きる理由そのものでした。あの子がいたから、どんな困難にも立ち向かうことが出来た。何度だって立ち上がろうと、背中を支えてくれた」
でも。
もう彼女はいない。その罪科さえ、フェイの背中には重すぎる。
――ふざけるなと、声を荒げて言ってやりたかった。被害妄想もいい加減にしろと。自分の過ちを神聖化して、悲劇のヒロインを演じているだけじゃないか。
だが角利の言葉に、果たしてどれほどの重みがあるのか。
作り上げた十字架から目を逸らしたのは、自分だって同じこと。たとえ同情する人がいても、足が止まってしまったのは本当だ。今回のように優れた偶然が働かなければ、一生迷い続けたかもしれない。
結局、自分たちは弱かった。