表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師は現代社会に殺される  作者: 軌跡
終章 少女の存在、真実
145/168

近付く終幕 12

「私は間違っていた。妹の未来がないことを知りつつ、自分のためだけに彼女を生かしたんです。一人になるのが怖かったから。妹のためだと、ずっと自分を騙してきた」


「……誰だって、家族には死んでほしくないだろ」


「病院から一生出られなくとも、ですか?」


 試すような問い。――条件反射で現れたのは、解答ではなく沈黙だった。

 まともな人間には戻れない、癒しようのない身体。そんな状態で生きて、死んでいないと言えるのか。希望が潰えていたのは、最初から分かっているのに。

 フェイの質問から導かれる解答は、どこまでも真実で残酷だ。

 そのエゴ、利己を良しとする人間もいるだろう。が、彼女には無理だ。妹のため、を行動原理に据えている彼女には。


「私にとって、妹は生きる理由そのものでした。あの子がいたから、どんな困難にも立ち向かうことが出来た。何度だって立ち上がろうと、背中を支えてくれた」


 でも。

 もう彼女はいない。その罪科さえ、フェイの背中には重すぎる。

 ――ふざけるなと、声を荒げて言ってやりたかった。被害妄想もいい加減にしろと。自分の過ちを神聖化して、悲劇のヒロインを演じているだけじゃないか。

 だが角利の言葉に、果たしてどれほどの重みがあるのか。

 作り上げた十字架から目を逸らしたのは、自分だって同じこと。たとえ同情する人がいても、足が止まってしまったのは本当だ。今回のように優れた偶然が働かなければ、一生迷い続けたかもしれない。

 結局、自分たちは弱かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ