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近付く終幕 9
「さて、治療は終了だよ。テレビは私がチェックしとくから、フェイちゃんの様子でも見てきたら?」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「頑張ってねー」
現状が分かっているのかいないのか、やはり由利音は能天気だ。
フェイがいる部屋まで迷う要素はない。ただ眠っているのを起こすのも気が引けて、あまり足音を立てないよう上っていく。
「さて……」
自分の部屋だっていうのに、角利は妙な緊張感を覚えていた。
まあ当り前なのだろう。アレだけの異変が起こって、何食わぬ顔で話せる方がどうかしてる。由利音みたいな、半ば考えなしのタイプは例外としても。
ドアノブを掴み、不審者顔負けの慎重さで部屋を覗く。
少女は、半身を起して外を見ていた。
他人のベッドで眠っている点は、彼女的に然して問題ではないらしい。泰然としていて、フェイこそが部屋の主なんじゃないかと思うほどだ。内装が個性に欠けているのも、感想を後押ししている。
「――何か用ですか?」
フェイは外を向いたまま、角利の存在を指摘した。




