近付く終幕 8
チャンネルはどれも、異変の速報で埋まっている。大量の魔物が出現したとくれば、そりゃあ無視なんて出来ないだろう。テレビ局自体、反魔術師の一般人ばかりだし。世論を形成するには絶好のタイミングなわけだ。
ニュースによると、学園周辺の隔離が急ピッチで進められているらしい。対抗戦力として出されたのは、魔術師と近代兵器で武装した軍人たち。犬猿の仲だろうに、仲良く肩を並べている。
「ふむふむ、もう向こうにはバレてるっぽいね。フェイちゃんが原因だって」
「じゃあテレビに映ってる連中、こっちに来るんですかね?」
「んー、どうだろうなあ。オークと睨み合いしてる状態だから、そう簡単には動かないと思うよ? 避難者の中から、必死に探してはいるようだけど」
「……」
なら四治会から、この路地からは一歩も出られない。
しかし、魔物に囲まれている現実もある。一刻も早くここから脱出し、フェイを安全な場所へ運ばなければならない。
だが、どこに? どうやって?
彼女は魔術師と一緒にいられない。ひょっとしたら普通の人間だって駄目かもしれない。
その中でどうやって生活する? 人里離れた場所で暮らすとしても、社会がそれを許すのか? これだけの大事を引き起こした元凶に。
楽観的な解答は出てこない。考えれば考えるほど、逃げ場がないことを痛感する。