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近付く終幕 7
「……」
考えを止めないようにして、角利は自分の右手を見る。
それは、人ならざるモノに変化していた。
手首から先が、完全に爬虫類――ワイバーンや、ドラゴンを思わせる変化を遂げている。鋭利な爪が生え、扱いに気をつけないと由利音に怪我を負わせそうだ。
武装召喚の魔術が影響しているのか、甲殻の部分は剣でびっしりと覆われている。
不治の病。いずれ来る暴走。
終わりを、実感した。
「……とりあえず、由利音さんは逃げていいッスよ。暴走症にかかるの、嫌でしょう?」
「そりゃあそうだけど……君を置いて逃げるのも、後ろめたいんだよね。話も聞いたし、ギリギリまで手伝わせてくれない? お姉さんが魔物になった時は、遠慮なく殺しちゃっていいからさ」
「それは俺が嫌なんですがね……」
「あー、それもそっか。じゃあ猫みたいに消えるって寸法で。どちらにせよこの状況、君一人じゃどうにも出来ないって」
「……スンマセン」
由利音は答えない。ただ、テレビ点けるよー、と埃まみれのリモコンに手を伸ばした。