彼らのお仕事 2
「……こ、これ、全部フェイがやったのか?」
「はい、隅々まで整理整頓を。インスタントですけれど、コーヒーも補充しておきました。食器も一つ残らず洗ってあります。喫茶店としての再開はまだまだですが、ギルドの拠点としては満足に動くかと」
「ど、どうも……」
コーヒーブレイク中の彼女は、頷きの代わりに小さく顎を引いた。
にしても、本当に驚かされる。角利が食事のため自宅にいたのは、長く見ても二十分そこいら。彼女一人ではどう考えても、床の掃除で限界だったろう。
だがその仮説を批判するように、窓からは薄い陽光が差し込んでいる。ビルの間から綺麗に差し込んできた光だ。カーテンがいつの間にか開いているお陰で、店本来の温もりが数年ぶりに吹き返している。
「な、なあ、どうやってやったんだ?」
「簡単なことです。――あ、皆さん、お疲れさまでした」
フェイが労うのは、角利の背後。
振り向けば雑巾やら箒、清掃用具一式があった。
ていうか、動いてる。独りでに。
清掃用具達はそれぞれ、挨拶するような身振り? を行った。……みんな汚れに汚れている。自分の怠慢ぶりが露呈されたようで、どことなく気分が悪い。
「では支払いは改めて。可能な限り汚れを落としてからお帰り下さい。最終的な後片付けは私が責任を持ちますので」
フェイが両手を鳴らすと、彼らは一斉に動き始めた。
雑巾は外のバケツで水を絞り、箒はついたままの埃をゴミ箱へ落としていく。まるで精巧なロボットだ。もちろん彼らには機械どころか、金属だって使われてないだろうけど。
角利は唖然とするしかない。何かしらの魔術だろうが、一体どんな仕組みなのか。