近付く終幕 6
そんなことを聞かれても、即答なんて出来っこない。御法の目的は暴走症の拡散だ。フェイはそのために利用され、生きていれば構わない。
「名案なんて思いつきませんよ?」
「ありゃ、らしくないね。もっと諦めが悪い子じゃなかったっけ?」
「……今回ばかりは、ちょっと難しいッスね」
自分が助けようとしている存在は、世界における毒そのものだ。
角利の行動はもう、死を前にした人間の《《我儘》》に過ぎない。フェイが仮に生き残ろうと、彼女は孤独でいるしかない。
自分がせめて、暴走症にかかっていなければ。もう少し前向きな考えも出来たろうに。
どうしろって、言うんだろう。
どうやって助けろって、言うんだろう。
無理だと喚くなら諦めるのが常道だ。最後まで責任が取れない行為は、フェイとって迷惑でしかない。御法に任せる方がまだ道徳的だろう。
でも、そんな妥協はしたくなかった。
――どうして? 自分から自分へ尋ねる。昨日会ったばかりの少女に、そこまで肩入れする理由は何なのか。
仲間だから? 助けられた恩があるから? 違う。そんな信念はもう、飾りさえならない。仲間だったら、助けられた恩があるなら、それこそ無責任な判断は捨てるべきだ。
もうじき、四治角利という人格は消滅する。
限られた時間で何を成し、何を繋ぐのか――フェイに対する衝動は、その答えと同じだ。