138/168
近付く終幕 5
「ほう、面白い」
角利もいい加減限界だ。迎えに来た箒を、乗るというより手で掴む。由利音が嫌な表情をしたが、ほかに手段がないので仕方ない。
重量オーバー。由利音は最初から上昇を諦め、安全な降下を選びとった。
「ではしばしの間、お主に預けるとしよう。死にさえしなければ、ワシの計画に支障はないのでな」
ドラゴンが、いっそう強く翼を振る。
目前の脅威は撤退を開始した。とんでもない置き土産をいくつも残して。
地上の人々は今も避難を続けている。空にいた最大の脅威について、認識も安心もなさそうだった。
もっとも。
知っていたところで、安堵する者は一人もいなかったろう。
一行が逃げ込んだのは、角利の家――つまりは四治会の拠点だった。
フェイが暴れたことと、表の騒動が重なって人はいない。幸いにして魔物もおらず、ひとまずの平穏が訪れていた。……耳を澄ませば悲鳴が聞こえる状態を、平穏と呼んでいいかは疑問だが。
「さあて、どうする?」
傷だらけの角利に治癒魔術を施しながら、由利音は明るいまま呟いた。