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近付く終幕 3
――あとの結末は必然でしかない。体力を失った敵兵など、彼にとっては殺す価値すらないものだろう。
だから、心臓を貫かれた。
「か……」
「恥じることはない。お主、ワシに今まで勝った試しがなかろう? にもかかわらず立ち向かったのだ。意味はあったろうさ」
栓を抜かれ、飛び散る鮮血。
だが。
「っ、は……」
倒れない。
死んだと理解できる傷でも、確かに命は残っていた。
さすがの御法もこれは意外だったらしい。口元に手を添え、何やら思案に耽っている。……せめて少しぐらい焦ってくれれば、こちらも気力が出るのだが。
御法は手を離すと、楽しそうに笑い始めた。
「なるほどな。角利よ、貴様も手遅れというわけか」
「手遅れ……?」
「小娘の妹と同じ、暴走症を起こしているな。まだ肉体の変化は始まっておらんようだが……いや、心臓を潰しても生きておるのだ。すでに変化していたか」
では、と聞こえた直後。
「首はどうだ?」
必殺の一撃が、今度こそ命を狩りにくる。