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真実 11
「な――」
「いやあ驚いたぞ。貴様の妹……親族には感染し難い筈が、まさか数年で引き起こすとは! おおかた長時間の接触が原因であろうが、感染力は歴代でも一位二位を争う。ワシを超える逸材だ!」
「……」
二の句が告げられない。じゃあ、あそこで苦しんでいる生徒たちは? 病院で発生したオークは? 狂っていた青年は?
すべて、フェイが原因なのか?
だとしたら大変なことになる。いや、御法はそこに目的があると宣言した。不特定多数の魔術師が、暴走症にかかっていたとしても不思議ではない。
「そん、な……」
フェイは完全に戦意を喪失していた。手に持った魔剣が、あっさりと地面に落ちる。
「気を落とすな、モルガン。魔物とはもともと、感染力を持つ者の駒にすぎん。いろいろと便利だぞ? 自我の転移、支配、様々なことが可能だ。ワシのように、ドラゴンを飼いならすことも、な」
「――」
フェイは答えない。虚ろな目で空を見上げるだけだ。
なので。
彼女を攫おうとするドラゴンの手から、逃げられるわけがない。