彼らのお仕事 1
魔術ギルド・四治会は自宅と事務所、喫茶店を兼ねている。
とはいえ、後者二つは半ば同じ扱いだ。ギルドのメンバーはいつも、店内で組織の運営を話し合っていた。完全に別枠で考えるべきなのは自宅ぐらい。
「ふう……」
その一階。両親の遺影が見守る居間で、角利は昼食を終えたところだった。
後片付けは弁当の空箱をゴミ袋に投げるだけ。使った愛用の箸は、学校が終わってから洗うとしよう。客を待たせているわけで、可能な限り時間は節約したい。
まあそれでも、両親への報告ぐらいは済ませようか。
「父さん、母さん、新しい人が入りそうだ」
物言わぬ笑顔の二人。この行為に意味を見出せないまま、気持ちの整理として話を続ける。
「これでやっと、うちも再スタートになると思う。……まあ息子が困ってると思った時は、夢にでも出て助言してくれ」
じゃ、と一言。表の物音が止んでいることに興味を引かれ、閑散とした居間を後にする。
店の方はどうも電気がついているようだ。まあ掃除をするにあたって、照明なしでは辛いものがある。昼間から電気を使うのは正直、抵抗感もあるのだが。
靴を履いて、角利は早足で店の中に入る。ほこり臭いんだろうな、と小さな覚悟で身を固めて。
――しかし待っていたのは、清潔の限りを尽くした空気だった。
塵一つ見当らない、とはまさにこの光景を差すんだろう。床はワックスでもかけたように艶があり、靴で歩くのを戸惑わせる。天井にあった蜘蛛の巣も綺麗さっぱり撤去されていた。
無残に転がっていたテーブルや椅子も同じ。年月の腐敗を一つの味に変えかねないほど、徹底的に磨きあげられている。
両親が管理していた当時を思い出させる――いや、それ以上の出来栄えだ。
「あら、お昼は済みましたか?」
そんな眩しい世界の一角。フェイは一人、優雅にコーヒーをたしなんでいた。
何処から出したと聞きたくなるが、雰囲気に圧倒されて何も言えない。まるで絵画の一場面。高貴な令嬢が食後の一杯を楽しんでいるような、完成された構図だった。
質問に肯定も否定もせず、角利はそのまま反対側へ座る。