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真実 8
言っている間に、檻を開くような音が響く。いつまでも慣れ合ってる場合じゃなさそうだ。
フェイも表情を切り替えている。凛々しさで武装した、女騎士の顔付きへと。
一抹の不安が脳裏をよぎる。彼女は普通に振る舞っているが、心の状態なんて見た目じゃ分からない。かといって、土足で入り込むのは当人が嫌うところだ。
何か、気の効いた台詞はないだろうか? 学生としては平均的な語彙を、珍しくフル回転させてみる。
「会長」
こちらの考えは、横顔を見るだけで筒抜けだったのか。
「私は大丈夫です。……仇をとって、妹の未練を晴らします」
「フェイ……」
頼もしくも、危うくも聞こえる言葉。
それでも角利には、信じることしか出来なかった。
「じゃあこれから頑張らないとな。爺さんとドラゴンに目にもの見せてやろう」
「はい」
力強い首肯。実際は見栄なのかもしれないけど、それを叱るなんて思わなかった。
人間、誰だって心の弱さは持っている。乗り越えようとする意思があるなら、純粋に尊重してやるべきだ。可能か不可能かは、試してみなけりゃ分からない。