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真実 6
角利は彼女に手を取られ、集団から少し離れた場所へ。もう少しくっついてください、と視線で催促を受ける。
副越しではあるが、肌の感触が分かる距離。漂ってくる甘い香りの正体は、彼女が使っているシャンプーだろうか?
「え、えっと、フェイ? これは?」
「教師が口にした通り、転移符と呼ばれる魔導具です。特定の場所に移動できますが、下準備が面倒でして。交通網の発達と同時に廃れました」
「でも授業では使えるのか……で、具体的にはどうするんだ?」
「符を握ってください。――いえ、先端を掴むと危ないので、こう、わし掴む感じで」
「そ、そこまでするのか?」
フェイと手が重なってしまうんだが。
見れば、周囲はほとんど同性同士でパートナーを決めている。異性の組み合わせは少数だ。明らかにカップルのような、仲睦ましい男女だけ。
フェイは彼らを見ることもせず、手が重なるのもどこ吹く風で。
「転移」
短く宣言した。