魔物の正体 11
幻獣の頂点。あらゆる魔術師が憧れる魔の生物。
全体的なシルエットは人間に近いが、身長は十メートル近くとまるで違う。加えてワイバーンを上回る三対、六つの翼。黒一色の甲殻は艶があり、さながら芸術品のように美しい。
まさに最強の象徴。
それが三人の前に立ちはだかる壁だった。
「その役目、ワシが引き受けよう」
太く勇ましい、信念に満ちた声。
ドラゴンの肩に一人の男性が乗っている。もちろん、着るのは紅いローブ。テュポーンのメンバーである証拠だった。
声も顔も、勘違いは通用しない。
「じ、爺さん!? 何しに――」
「知れたこと。少し早いのでな、ゴミを片付けに来た」
「なに……!?」
それ以上の説明はない。
御法が、明確すぎる実行に移ったからだ。ドラゴンにヴィヴィアを掴ませ、その巨大な口に運ぶなんて真似を。
ヴィヴィアは必死に暴れている。しかし力の差は明確。ドラゴンは微動だにしないどころか、軽く力を入れて彼女を黙らせた。――微かに、肉と骨の砕け散る音が聞こえる。
角利は怒りで、フェイは愕然としたまま敵を見上げていた。
迷わず由利音は矢を放つ。が、漆黒の鎧は貫けやしない。虚しく弾かれるだけだ。