116/168
魔物の正体 9
「止め――」
ろ、と喉を振るわせる直前。
一本の矢が、オークの腕を吹き飛ばした。
騒音でしかない、魔物の絶叫が響き渡る。
「無事!?」
「ゆ、由利音さん!?」
「ああ、無事だったならオッケオッケー!しっかし、テュポーンから言われたんでしょ? ここに入って来ちゃいけないって」
「い、いやまあ、そうッスけど、これには色々と事情が――」
話している間に、由利音は二射目の矢をつがえていた。
彼女も武装召喚の魔術を得意とする。編むのは弓と矢。狙撃手としての異名は、バイト店員の名よりも響いているだろう。
姿を現した状態でも、由利音の自信は変わらない。
動けば射る。必殺の気概で睨み、それだけでヴィヴィアの動きを縫いつけた。
「……この子が、本当に元魔術師なの?」
「間違いないですよ。俺の記憶を信じてくれるのなら、ですけど」
「何言ってんの、疑うわけないでしょ」
とはいえ警戒は緩めない。隙があれば今度は足を吹き飛ばすと、弦を力強く張っている。
それはヴィヴィアも同じだった。フェイが復帰し始めているのもあり、撤退するタイミングを窺っている。