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魔物の正体 8
オーク――ヴィヴィアはほとんど自我を失っている。病院前で逃げたのは、まだ肉体をコントロールできていたんだろう。この直前に逃げたのも、恐らくは同じ理屈だ。
しかし今はどうか。攻撃が苛烈さを増し、徐々にフェイを追い込んでいる。
加勢しようとする角利だが、途端に足が止まった。
四治事件。あの時、魔物の襲撃があったわけじゃない。
両親が、仲間が、暴走症によって魔物と化した。
それを角利が、一人残らず狩り尽くした。
「う、あ……」
「会長!?」
当時と似たような状況が、過去を強く回想させる。
かけ寄ろうとしたフェイは隙を突かれ、あっけなく幹へと叩きつけられた。起き上がる気配はない。最初から障害になっていない角利を無視して、オークは彼女へと近付いていく。
丸太のように巨大な腕が、垂直にかかげられた。




