魔物の正体 7
角利も間を置かずおいかける。が、頭の中を埋め尽くしていたのは、フェイに対する心配ではなかった。
おかしい、何かがおかしい。
こちらから逃げたことといい、あのオークは普通じゃない。それだけ腹が一杯なのか? あるいは、まだ魔物になっていない幻獣か? それなら召喚した魔術師がいる筈だが。
自分たちが誘導されているなら、確かにゾッとする話ではある。
しかし角利の直感は違うと断じていた。理由はほかにあると。実際、オークから敵意らしい敵意を感じていない。逆に、助けを求めるような――
視界の奥では、フェイと魔物が一対一で戦っている。
その光景に。
かつて一度だけ味わった、底知れない恐怖があった。
「――フェイ、やめろ!」
声は届かない。聞こえないフリをしているのか、実際に聞こえていないのか。
言葉は自然に溢れてくる。が、正気を疑う内容でもあった。彼女が真摯に聞いていても、納得する可能性はゼロに近い。
それでも言う。
かつての悲劇を、繰り返したくないのなら。
「そいつがヴィヴィアだ!」
「!?」
「そいつは、暴走症で魔物になったヴィヴィアだ! 剣をしまえ! 取り返しがつかないことになるぞ!」
「し、しかし――」
どうにか聞いてはいるらしい。一方でオークの攻撃は止まず、フェイは戦闘を再開するしかなかった。