魔物の正体 5
短く何かを呟いた角利は、迷うことなく空中へ。飛行能力を持たない以上、自由落下の悲劇が待っている。
だが、そのための言葉。
黒煙をたなびかせる、箒最後の意地。
「頼むぞ!!」
相方は弧を描いた挙動で、角利をボールに見立てて投擲する。
攻撃をからぶったワイバーンの、頭上へと。
角利に背後に展開された剣が、意趣返しとばかりに降り注ぐ。翼の膜を撃ち抜き、動きを少しでも縫うために。
「おおぉぉぉおお!!」
一閃。
首を切り落とされたワイバーンは、そのまま地面へと墜落した。
直後に響く爆発音。……たぶん箒だろう。あとでフェイに謝らなければいけない。
「会長!」
噂をすれば何とやら。魔術で完全武装した彼女がやってくる。
鎧は少し汚れているが、大きな傷を負ったりはしていないらしい。呼吸の乱れもなく、首のないワイバーンと角利を見比べる。
「ま、まさかお一人で?」
「ああ、どうにかな。向こうの方にも一匹いるぞ」
「あ、相手はワイバーンですよ? どんな無茶をしたんですか……」
「そりゃあいろいろだよ」
細かく説明したら、きっと叱られる。
――まあ鉄クズとなった箒の方が、フェイにとっては一大事らしかったが。
「あ、ああ、まだローンが残っているのに……」
「ほ、箒にもあるのか、そういうの。……いっそ、うちに正式所属してくれないか?」
「考えておきます……」




