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魔物の正体 4
「よし!」
見たところ箒に傷はない。バイクのような外見をしているだけあって、頑丈なんだろう。
もっとも、素人の推測だ。
「!?」
唐突に高度が落ちることは、いっさい想定していない。
噴きだす黒煙、好機とばかりに飛びかかるワイバーン。避けられるだけの足もなく、惨めに食い潰されるだけ。
それでも。
最後の最後まで、やれることは全部やる……!
角利の選択は飛行だった。
親から貰った二本足で、箒を土台に宙を舞う。
ワイバーンの牙は何も砕くことなく外れた。角利は無事、その巨体を眼下に置いている。
いや、すでに足元。
擦れ違う瞬間を利用して、敵の背中に乗ったのだ。
「この……っ!」
魔剣を手に、首筋の甲殻を貫通する。
甲高い叫び声は上下から聞こえた。かたや激痛による悲鳴、かたや――仲間の仇打ちとでもいうべきか。二体目のワイバーンが、足の爪を武器に急降下する。
逃げられない。いや、逃げる必要などない。
敵がいるなら、超えるだけだ……!