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魔物の正体 3
「おいおい……!?」
間髪いれず、左右から炎が飛んでくる。
直撃コースは避けるものの、範囲が範囲だ。防御する手段もなく、大部分の処理は箒にすがるしかない。
縦横無尽、角利を振り落とすような勢いで箒は飛ぶ。
安全地帯を地上に見出したのか、錐揉み姿勢で落下する箒。追い縋るワイバーン。彼らの急降下は落下に等しく、鷲のような爪を大きく開いて叩きつける。
「っ――」
地面スレスレでカーブを描き、箒は再び空へ。直撃を逃した爪は角利の髪を掠めとった。
それは人生でも数えるほどしかない、死の感触。
「……っ」
意識が乱れる。
箒はその影響を直に受けた。空へ戻ろうとしたところで軌道を乱し、公園の池へと突っ込んでいく。投げ出された角利は幸か不幸か、水に投げ出されるだけで済んだ。
水面から顔を上げれば、突っ込んでくるワイバーンが。
畔に転がっている箒は、まだ無事。
「来い!」
一か八かの賭けだった。
果たして。
戦友は無事、仮初の主人へと駆けつける。