目覚め、そして美少女 4
「でしたら、私がここに来た理由も、察して頂けますね?」
「い、いや、直接言って貰わないと」
「では改めて。――私、フェイ・モルガンは、このギルドへの所属を希望します」
「え」
驚くというか、呆れるというか。
フェイ、と名乗った美少女は迷いのない瞳を角利に向けている。成程、熱意については確からしい。ギルドは二人以上の会員がいないと仕事を引き受けられないし、願ったり叶ったりの提案である。
「一応、手帳を見せてもらっていいかな?」
フェイは躊躇なく、掌サイズの手帳を差し出した。
表には魔術師育成学園・清明と。やはり同じ学校の生徒らしい。これだけの美少女なら、顔ぐらい知っていてもおかしくなさそうなものだが。
目当てのページに向けて、角利は裏側から捲り始めた。
この生徒手帳とも呼ぶべき物は、魔術師としての能力を記している。就職活動において必須のアイテムで、先の職業案内所で角利も見せた。……事務員の渋い顔は、常人に真似できないレベルだったと思う。
「な――」
指を止めたところで、絶句した。
彼女の手帳、すべての成績で最高評価が記されている。
ありえない。こんな成績、大手のギルドからお誘いが来るぐらいじゃないか? 少なくともこんな、消滅寸前のギルドに来る魔術師じゃない。
手帳に視線を落とす中、分からないように彼女を一瞥する。――やはり油断も隙もなく、選定される側としての緊張感で一杯だった。
「……」
角利の手帳であれば、E、が記載されている筈の実技項目。フェイは堂々のSである。
ありえない、と角利は頭の中で復唱した。実技項目は基本、優秀な生徒でもAしか取れないよう設定されていると聞く。曰く、明確な壁を用意することで、学生の質を保つんだとか。
フェイと名乗ったこの少女は、そんな壁すら超えたらしい。
頼もしく思う反面、混乱する。こんな天才、四治会が最盛期の頃だってやってこなかった。新手の詐欺か? これ。