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ワイバーンと紅い軍勢 10
いきなり会話を振られて驚くかと思ったが、フェイはええ、冷静に頷いた。
「日常的に出歩いていたら問題児ですよ。少なくとも子供ではありませんね」
「じゃあ一度だけ爺さんに連れ出された俺は、そのとき子供じゃなかったわけか」
「あら、御法さんが?」
「一回だけな。暇だから星でも見るぞ、って夜中に叩き起こされたんだよ」
真冬の夜のことだった。正気かジジイ、と孫の方から注意したほどである。
もちろん、祖父との大切な思い出の一つだ。まあ二度と氷点下の夜に叩き起こされたくはないが――うん、やっぱり半分ぐらいは嫌な思い出かもしれない。
「家族、ですか……」
「うん?」
角利が一人で苦笑している横、フェイは罪悪感に押し潰されそうな顔をしていた。
彼女自身、言葉にするのをためらう話題なんだろうか? しばらく、足音だけが響いていく。
「御法さんはどうして、あんなことをしたんだと思います?」
「……」
戸惑うのも仕方ない疑問。
自分の気持ちを再確認する意味を込めて、角利は静かに語り出す。




