ワイバーンと紅い軍勢 9
辺りは、四治会の付近以上に暗かった。
地理的には公園にある森林地帯の中。街灯はなく、かといって月明かりも頼れない。生い茂った木々で遮られている。
こういう時、懐中電灯が便利になる。
「会長、こちらです」
もちろんフェイが用意しており、角利はその後を追っていく。
辺りは見渡す限りの闇。どのような形であれ、光は目を引く存在だ。もし他の誰かに見つかれば、即通報の失態となるだろう。
自然と強くなる警戒心。無意識なのか意識的にか、フェイはピッタリと肩を寄せて離れない。
――今更、彼女の体格が女性でしかないことを自覚する。
あんな力を持って、魔物を一刀のもとに切り捨てるのに。小さな肩は掴めば折れてしまいそうで、剣を振るうイメージすら持たせなかった。
一方で、全体に視点を移すと凛とした説得力がある。戦乙女とでも言えばいいんだろうか。ドレスを着ればさぞ似合う美少女だけど、男性の正装も似合いそうな気がしてくる。
まあ個人的な秘書のイメージだし、やっぱり学校の制服が一番――
「し、しかし、こういうのもレアな体験だよな」
沈まれ煩悩とばかりに、うろたえ気味で話しだす。