目覚め、そして美少女 3
「……」
少し息を吸って、思考を自分の中に戻す。
罪状は一つ。彼女の生着替えを見てしまった。当り前のことだが酷くご立腹で、明確な謝罪でもしなければ動けたもんじゃない。多少は向こうにも非があろうとだ。
どうにか肩の力を抜いて、角利は改めて美少女を見る。
「――一つお伺いしたいのですが」
凛とした、部屋の隅々まで響く美声だった。
行動の意味を計りかねるまま、角利は首を傾げる。しかし向こうは、それを了承と介したのだろう。可憐な唇が短い前置きを作っていた。
「こちらの魔術ギルド、まだ存在はしておいでですね?」
「え? あ、ああ、登録料は一応払ってるからな。見た目こんなんだから、活動してるとは言い難いが……」
「ええ、存じ上げております。何でもご両親が亡くなって以降、ご子息のみが残ったとか。政府の認定している仮ギルドに分類されていますね? 一人の会員しかいないのであれば」
「……ああ、そうだよ」
認めるのも悔しいが、誤魔化す方がもっと恥かしい。
魔術師の集まりである、魔術ギルド。四治会はその一端だ。喫茶店の外観をしているのは、両親の気遣いと、切実な事情が一つある。
日本政府は、ギルドに対して高額の税を課しているのだ。
就職難の魔術師たちを支援するための政策らしい。一般市民から徴収するわけにもいかず、魔術師同士の支援、という形でギルドに税が課されている。
組織自体の認可に必要なため、角利が口にしたように登録料と呼ぶのが一般的だ。
……その登録料で経営不振に陥ってるギルドからすれば、皮肉以外の何でもないが。