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こちらアルパ貿易商社  作者: 四葦二鳥
第1章 バイオ研究試薬編
7/25

閑話・住居探し

 地球へアルパ星の事を説明する記者会見から半月前の話。


 アルパ商事地球支社の副社長としての役割を与えられた僕は、これから地球とアルパ星の間をせわしなく行き来する事になるだろうと予測していた。


 その時、問題になるのが二つある。一つは船の問題だ。

 現在、アルパ星と地球の移動には、成人の儀用の『チュナーティ号』を使っているが、もう儀式は終了したのだから、いつまでも使う訳にはいかない。


 だが国王は、『最初は3年程使ってもらう予定だったし、別にもう少し使っていてもいい』と言っていたので、しばらくはありがたく使わせてもらう事にしている。


 もう一つは住居の問題だ。今アルパ星に滞在中は、ロイヤル・アルパ・ホテルで寝泊まりしている。

 しかし、いつまでもホテル暮らしという訳にはいかない。今のペースだと年に半分以上はアルパ星にいる計算になってしまう。そうなると、ホテルに滞在するより家を買ってしまった方が安上がりだと思うのだ。


 幸いにして、儀式の協力費50万ベネとアルパ商事との雇用契約時に支払われた一時金100万ベネ、合わせて150万ベネ持っているため、普通の家なら一括で買えるだろう。


 その事をルイに相談した結果、3日後に不動産屋さんを紹介してくれることになった。


 で、不動産屋さんと面会する当日。


「いらっしゃいませ。私、アルパ不動産の営業部長をしております、スピーティと申します」


 アルパ不動産とは、アルパ商事の傘下企業の一つである。ルイに紹介してもらったのも、この企業だ。

 だが、なぜこの40後半っぽい、営業部長という管理職でベテランの人が僕の短刀になったのか、全くわからない。ただの偶然だと言いが……。


「この度、笹見様が物件をお探しという事を、国王陛下から社長がお聞きになられたようで……。しかも私直々にご使命だとか……」


 偶然ではなかった。完全に国王の意思が働いている。

 一体僕に何をしようというのだ?


「すでにいくつか物件をピックアップしておりますので、これから下見に参りましょうか」

「え、予算とか希望とか聞かないんですか?」

「すでに支払い可能額に関しては承っております。その範囲内でピックアップしましたので、必ずやご期待に添える物件が見つかります」


 そして、半ば無理やり連れ出され、最初の物件へ足を運ぶのだった。



「最初の物件はこちらです」


 スピーティ部長の運転で連れて来られたのは、キエンポリス郊外にある、巨大な邸宅だった。


「こちらはアルパ星の貴族の子孫である方がお持ちになられていたのですが、管理が大変だと言う事で、数年前に手放されたものです」


 貴族の邸宅だけに、歴史があり、頑丈であるため、あと数千年は持つと言う。もちろん、最新鋭の設備を、屋敷の景観を壊すことなく導入しているとのこと。


 でも、僕一人しか住まないんだから、やっぱり管理で手いっぱいになるんじゃ……?」


「では、中をご案内します」


 しかしスピーティ部長は僕に質問をさせる間を与えることなく、さっさと内部に入ってしまうのだった。


 屋敷の中は、さすがは貴族の邸宅というべきものだった。数え切れないほど部屋の全てが、貴族らしい気品に満ち溢れている。決して成り金趣味的ないやらしさを感じない。

 しかも、家具付きなのだ。どうやら前の持ち主が、わずかばかりの家具や美術品を持って行っただけで、ほとんどが『保管場所が無い』という理由で屋敷と一緒に置いて行ってしまったらしい。

 だから、手ぶらでもそのまま住めるのだ。


 さらにこの物件のいいところは、意外と交通の便がいいのだ。

 庭には自然がいっぱいなのに、意外と近くのバス停から15分ほどでキエンポリス中央部まで行けてしまう。


 総合的に見て、これほど優良な物件はないだろう。

 問題は、値段だが。


「いい物件だとは思うけど……値段は?」

「はい。582万8千ベネとなります」


 ……え? 582万? それって、僕の資産の6倍近いじゃないか!

 ついでに、これほどの物件なら日本で言うところの、いわゆる『億ション』になるとは思っていたけど、予想よりも上を行っていた……。


「ちょっと……高すぎでは……?」

「ですが、現在の笹見様の資産と、今後支払われるお給料を考慮しますと、ローンを組むことは可能ですが……」

「でも、結局住むのは僕一人ですし、維持費等を考えますと、僕の手に余ると言うか……」

「そうですか。では、次の物件に参りましょうか」


 そして僕達は次の物件へと向かった。

 それにしても、スピーティ部長の退きが良すぎると思ったのは気のせいだろうか……?



「続いての物件は、こちらです」

「……これは……」


 一目見て絶句した。目の前にあるのは、どう考えてもボロアパートだからだ。

 立地も、キエンポリス都市部にあるのだが、ここは比較的治安が悪い事で有名な土地で、出来る事なら近付きたくない場所なのだ。

 間違っても、(自分で言うのも何だが)大企業の支社の副社長の様な高給取りが住んではいけない場所なのだ(身の安全的に)。


「では、中をご覧ください」


 またしてもスピーティ部長は、有無を言わさず部屋へと僕を連れて行った。


 結論から言うと、この物件はない、の一言だった。

 ワンルームなのはまだいい。だが風呂なしシャワーなし、トイレは共同と、水周りが充実していないのが気に入らない。

 一番のネックは、当然立地だが。


「お値段は3200ベネですが」

「安けりゃいいってもんじゃないから」


 日本円に換算して3万2千円はどう考えても安すぎる。この物件の設備や立地を考慮しても、非常に安すぎて、とてもじゃないが怖すぎる。

 何か他にあるんじゃないかと勘ぐってしまうのだ。


「そうですか。ではお次の物件に参りましょう」


 またしても、スピーティ部長はあっさりと引き下がった。


 ついでに言うと、この日は運が良かったらしく、治安が悪い地域にいたにしてはトラブルに巻き込まれる事はなかった。



「こちらが最後の物件になります」

「これはマシだな」


 3つ目の物件は、1番目のお屋敷とは別方向の郊外にある、中規模の運河に面した邸宅だった。

 3階建ての一軒家で、昔の中規模商人の家であったらしく、歴史も古い。でも状態が良く、1番目のお屋敷ほどではないが高貴さを漂わせている。


 中には言ってみると、古めかしいデザインながら最新の設備が整えられており、電気・ガス・水道が通っている。

 水周りも清潔で充実しており、各フロアに1ヶ所ずつトイレと洗面所が設けられている。


 1回にリビングとキッチン、部屋が2部屋あり、2階と3階は部屋が各4部屋とベランダがある。仕事だけでなく、趣味の部屋を作る事も可能そうだ。


 庭は適度に広く、ガーデニングや家庭菜園が出来るし、ちょっとした運動スペースにする事も出来るそうだ。大きめの物置もあり、収納にも困らない。


「いかがでしょう? こちらの物件であれば、ご家族(・・・)が(・)増えた(・・・)場合(・・)でも対応できます」


 妙に強調した様な言い方だが、将来性を考えると間違ってはいないだろう。一人暮らし向けでなく、家族向けの物件っぽいからな。


「こちらのお値段、48万ベネになります」


 日本円で約4800万円か。少々安い気がするが、まぁ妥当な範囲だろうな。

 別に気に入らない箇所もないし、欠陥がある訳でもないしな。


「いいんじゃないかな。ここに住みたいよ」

「かしこまりました。では、こちらの書類にサインを」


 僕は提示された書類にサインし、WD(ウォッチデバイス)とスピーティ部長が持つ支払い機を近付け、一括で支払いをした。


「ありがとうございます。ところで、今ならキャンペーンで、ご契約されたお客様にご購入された物件に似合う家具をサービスさせていただいておりますが、いかがでしょう?」

「頼む。ぜひそうしてくれ」


 こっちはこれから仕事に忙しくなりそうで、家具を選んでいる暇はない。だから勝手に選んでくれて、しかもタダでもらえるんだから利用しない手はないだろう。


「かしこまりました。ではこちらの見取り図に、どのような部屋割にするか、簡単なイメージをお書き下さい」


 とりあえず、リビングにテーブルとイスとソファ、テレビとAV機器とゲームを設置。1階の部屋は書斎と寝室。2階の2部屋は客間として、残りは後々考えよう。


「とりあえず、こんな感じで」

「かしこまりました。保留にされているお部屋は、決まり次第ご連絡を入れていただければ、またサービスに参りますので。家具の搬入は、明後日の予定となります」


 こうして新たな住居も決まり、僕は家具が入り完成した家がどの様になるか、少しだけ楽しみにしていた。



「な、なんだこれ……」


 2日後、家具の搬入が終わったという知らせを聞き付け、ホテルの部屋を引き払って来てみると、予想外の光景に絶句した。


 家具は全て高級品。王室にも納入されている、いわゆる『王室御用達』に指定されている老舗家具メーカー『カンデル』なのだ。これらの家具一式だけで、軽くこの家の値段を越えていると思う。

 トラディショナルなデザインの家具と家の歴史の深さが絶妙にマッチし、高級感がさらに増しているように感じている。


 でもまぁこれは、ただ単に『こんなのサービスで貰って、経営とか大丈夫なのだろうか?』と思うだけだ。むしろラッキーという思いの方が強いだろう。


 僕の頭を悩ませたのは、寝室のベッドだ。なぜかキングサイズ、しかも枕が二人分あるのだ。さらに寝室には化粧台まである。

 まるで、無言の結婚の圧力を加えられている様だった。


「お気に召していただけたでしょうか?」


 接客しているスピーティ部長が話しかけてきたが、色々ツッコミどころがありすぎて、僕にはどう切り返せばいいかわからなかった。


「ここだけの話ですが、さるお方からバックアップを受けましてね。このような家具のピックアップも可能となった訳です。

 ただ条件が付いてしまいましてね。寝室に化粧台を入れ、ベッドをキングサイズ、夫婦用で入れろとのことでしたので……」

「で、そのバックアップをした人物は?」

「残念ですが、そこは秘密保持義務というのがありまして……」


 そうはぐらかされてしまい、僕はこのような部屋にした真犯人を突き止めることができなかった。


 ただ、後から思えば、この時から外堀を埋められ始めていたのかもしれない……。


とりあえず、1章終了です。


2章のプロットはできてはいますが、小説として書きあがっていません。

とりあえず、1か月以内には仕上げる予定ですので、ちょくちょく確認にきてくだされば幸いです。

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