第二章~しょうかい~(3)
「いやいや、何を不思議な顔してんのよ。その子はあんたといた時なんにも着てなかったのよ?」
「マジっすか!?」
「春になったとはいえ夜はまだ冷えるのにこんな子どもを裸でとか、かなり引くんですけど」
フィルはそう言って徐々にミュウとの距離を開ける。ミュウを見る目がドンドン冷えてくる。
「えっと、あの・・・・・・なにか誤解をしてらっしゃるのではないかと思ったり思わなかったり」
冷や汗をだらだら流し弁明をしようとあたふたとしだすミュウ。
「いや、気にしなくても良いのよ?世の中にはそういったのが好きだとかいうのもいるし?あたし特に気にしないし」
「気にしないならこっちに来てよ!というか目を合わせてくださいお願いします!」
先程からもはや距離どころか視線すら合わせてくれない幼馴染みにミュウはとうとう涙目になり懇願する。
すると、
「ミュウいじめちゃめっ、なのっ!!」
リアがミュウの前に立ち塞がり、両手をバタバタさせながら怒った顔でフィルを睨む。幼児の睨みなので全くといって怖いことはないどころかその所作に愛くるしさを感じるが今は別のはなし。
「え、えっと・・・・・・」
とはいえ、いくら怖くないとはいえ、睨まれ怒られるとさすがに動揺はする。
「ミュウはわるいひとじゃないもん。やさしいひとだもん!」
「リア・・・・・・」
「ミュウをやさしく抱き締めてくれた。いつまでも一緒だからって言ってくれたの」
「だからリア、ミュウにはじめてあげたの。こわかった?けど、ミュウだったらいいって思えたの」
「あれ?り、リアさん?」
「・・・・・・あんた、こんな幼子にいったいなにを・・・・・・」
フィルは顔を青くさせ、嫌悪感丸出しで腕をさすり部屋の外に出てしまった。さっき少し縮まった距離(精神的にも物理的にも)かと思ったのに、元通りどころかさらに遠くなり、今や地平線の彼方までに感じる。
「ちょっ!?ま、待ってよフィル姉さん。誤解なんだってば!リアも何で誤解を生みそうな表現を使うかな!?」
「うゆ?」
「なにかあったの?みたいな顔しないでよ。君が招いたことだからね!?いやさっきのは表現的には間違っていないだろうけどーーーーーー」
「やっぱりそうなんだ。ミュウの変態っ!スケベっ!!ロリコンっ!!!」
「んなっ!?ろ、ロリコンって。僕をサルーさんと一緒にしないでよ。僕自身の名誉のために!!っていうか開けてよ!?話せばわかるから」
「いーやーでーす!!近寄らないでよ!!」
「ミュウ、ロリコンってなに?」
「え!?いやその、えーっと・・・・・・」
「それは僕のような紳士、ということさ。お嬢ちゃん!」
「「え?」」
ミュウとリアが部屋の出入り口を向くとそこには男が一人ドアを開け放ち立っていた。
服の上からでも良く分かるようなごりマッチョと言えるほどの膨張した筋肉に、白い歯をキラリと光らせ満面の笑みを浮かべている。
その彼の耳は尖っており、それが彼が人間種でなくエルフ種という証だ。
(僕の知っているエルフとはかけ離れてるけどね)
少なくとも知っているエルフは高潔で清廉なイメージがあるんだけど。
彼の登場により慌ただしかった空気が霧散し、妙な静けさと冷たさが漂っている。
「・・・・・・サルーさん。何でここにいるんですか?仕事はどうなさったんですか?」
真横にいるフィルはサルーと呼んだ男からゆっくり離れる。
「む?どうとは言われてももう昼時であるからして、昼食をいただきに来たのだ」
「あぁもうそんな時間でしたか。分かりました。ならば食堂に行きますか」
そう言われた途端ミュウのお腹が盛大に鳴り出した。
「あっ。ミュウのお腹いますごく鳴った」
「おぉ、ミュウよ。起きたのだな。ならば共に食事をとろうではないかそこのお嬢さんも、ご一緒に如何か?」
「・・・・・・ミュウ。食べれるならあんたも食べよ?リアもね」
気恥ずかしくて顔を赤くさせているミュウを見てフィルはふっと笑い入り口に顔だけ出して話しかける。
「う、うん。いただきます。リアもいこっか?」
照れ笑いながら立ち上がり、リアの頭を一撫でした。
「うんっ。いくっ!」
リアはピョンピョンはねてミュウにくっつく。
それを見てミュウもにっこり笑ってリアの手を取り二人の後を追っていった。
「ふむ、素晴らしい幼女、もといお嬢さんだ。ハァハァ。私もあんな風になつかれてみたいものだ。それにしても嬉しいぞミュウよ。君もとうとう私の理念を理解してくれたのだな。ならばこれからは同士と呼ばせてもらおうではないか、同士よ!!」
「嫌に決まってますよ!?僕はいたってノーマルです。だからフィル姉さん、そんな顔しないでよ!!」
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次回も土曜日に投稿します。
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