第一章~であい~ (2)
それではどうぞ!!
「参ったなぁ・・・・・・」
あれから登ること10分ちょっと。休憩時は天気があれだけの晴天だったのに急速に青空が灰色になり、徐々に黒さを増していき、とうとう雷雨となってミュウの足を阻んだ。
「でもまぁ、不幸中の幸いってやつかな?」
そう言って後ろを振り返る。
視線の奥は埃っぽい匂いで充たされている、今はもう使われていない廃坑らしきところの中に彼は今いた。
雨が降り始めた時に近くにあったのを偶然発見し、雨宿りがわりに使わせてもらった。おかげでほとんど濡れずにすんだのである。
「でも、しばらくは止みそうもないかもな」
時間の経過と共に勢いの増す雨足を出入口付近からそっと見て、ミュウはため息を吐いた。
「これは今日は中止だな。仕方ないけど」
誰に言うでもなく独りごち、もうしばらく待って、雨足が落ち着き次第無理せず下山しようと心に決めたミュウはその場に荷物を下ろし、自身も床に座って曇天の雨空を眺めた。
どれくらいそこにいただろうか。
この雨空のせいで時間の感覚がわからず、今の時刻を知ることができない。
ただ、先程よりも薄暗さが増したところを見るに、多分夕暮れも近いかなとは思う。
雨は全く止む気配がなく、むしろ少しずつ勢いを増していくなか、ミュウは困ったように頭を掻いた。
「最悪、ここで一晩過ごさなきゃいけないかな?」
元々一日かけての採掘作業にするつもりだったから寝袋や食料に関しては問題はない。
「だったらまずは寝る場所とかを決めとかないとね」
入り口付近では雨風が入ってくる可能性もあるため、もう少し奥の落ち着ける場に行こうと思い、ミュウは荷物の口を開きガサゴソと漁りだす。
「えぇ~っとたしかここに・・・・・・あ、あったあった」
荷物の中からランタンを取り出しスイッチを入れ、明かりを廃坑の奥に向ける。
奥はひたすらに暗闇に満ちており、入り口近くのここよりは気持ち、暖かい。
しかし、空気の通る音が獣の唸り声のように聞こえてきて少し不気味な印象を与える。
少し怖くなり身体がぶるりと震えたが、すぐに頭を振って怖い考えを追い払う。
心を落ち着かせ、意を決して中に進もうと足を動かそうとすると、外側から雨音とは違う音が聞こえたような気がして出入口の方を振り向いた。
しかしそこには誰もおらず、聞こえるのは雨が地面に当たる音だけだ。
「・・・・・・気のせいだったのかな?」
不思議に思い小首を傾げたが、こんな大雨のなかで山道を動くものもいないかと思い直し、ミュウはくるりと坑道の奥へと歩みを進めた。
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バケツをひっくり返すほどの大雨のなか、バシャバシャと複数の水溜まりを走っていく音が混じっている。
「報告します。計画は天候により多少の遅延あり。しかし支障はなし。いつでもいけるとのことです」
レインコートを羽織った男たちは、山中に設営されたテントの中にいる彼らより上の男らしき人に敬礼し現状を報告する。
「わかった。ではこれより数分後、ここ一帯の爆破作業を行う。そのため現時点をもってここを離脱する。作戦遂行時まで警戒を怠らないように。他の者たちにもそう指示しておけ」
「了解!!」
上司らしき男に指示され男たちは再度敬礼し、設営テントから出ていった。
「さて、本当にここに"オリジン"があるのか」
誰もいなくなったテントにて、男は座っている椅子に体を深く沈ませた。
「まぁどっちでもいいか。今はまぁ姫君の命に従っていよう」
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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次回も土曜に投下します!!