第一章~であい~ (1)
「はぁ、はぁ、はぁっ」
いつも通いなれている鉱山、そこを登っている男が一人。
年の頃は、10代の後半なのだが、幼い顔つきや華奢な体つき。それに少し癖っ毛のあるふわふわの金髪が実年齢よりも彼を幼く見せる。
朝早くから登りしばらくして、中腹ほどにある平らな石を見つけそこに荷物を置き、自身も腰掛け一息いれる。
乱れた呼吸を整えつつ、腰に提げている水筒を抜き取り口をつける。
「んくっ、んくっ、んくっ」
ここに来る前に井戸から汲み上げた水は保冷機能が内蔵された水筒のお陰で冷たさが維持されており、渇いた喉を潤し熱くなった体温を下げてくれる。
「ぷはぁ。・・・・・・ふぅ」
飲み終えた水筒をまたもとの場所に入れ空を見上げる。
今日は雲がひとつもなく、陽の光も春特有の暖かなもので絶好の採取日和と言えよう。
仕事の休みの日には必ずといっていい程この鉱山の魔石採取を行っている。
彼、ミュウ・アドリードがこれを始めたきっかけは彼の師匠であり雇い主の人形精錬師である親方がやっていた『自分が使用する魔石を自分で採掘する』というのを自分なりにやっているのである。
ーーーーーー人形精錬師
この世界にある不思議な力を宿している魔石と呼ばれる鉱石を加工、製作する人たちの中でも一番難度の高いゴーレムを創造できる者の総称である。
ちなみにそれ以外は精錬師と呼ばれており、ミュウもその精錬師の一人である。
と言っても彼はようやく新米精錬師になったばかりであるが。
それはさておき、そんな尊敬する親方がやっていることを真似て自分も一歩でも彼に近づきたいと思って始めたのが彼の工房で働きだして2年ほどしてから。
しかし、最初は素人ゆえに目利きなんて当然できるはずもなく、持ち帰るもの全部ただの石だというのはよくありがっかりしたことがあったが、今では少しくらい分かるようにはなった。
そんな昔をちょっと思い出してクスリと笑い、ミュウは懐に入れてある魔石を取り出した。
それは研磨された形跡がないにも関わらず完全な球となっている透明の水晶を太陽にかざす。
太陽の光を反射し赤や青、緑や黄色と角度によって色とりどりの光彩を放つそれをミュウは目を細めながら見る。
この魔石は僕が物心つく頃には既にあったもので、誰から貰ったのか、何時からあったのかもあやふやで思い出せない。
ただぼんやりと覚えているのは、幼い僕の頭を撫でる優しい手と「いつか使うときまで、本当に信じてる人以外には見せないで」という言葉。
僕は名前も顔も知らないその人の言葉を守り、今まで見せたのは幼馴染みの女の子と親方だけ。
だが、魔石に関して詳しい親方に「・・・・・・知らんな」と言われたことには驚いた。こと魔石に関して知らないものはないと思っていた親方にも知らないことがあったのだと。
『・・・・・・他のやつらには見せるな。そいつの言いつけ通りにな』
そう言ったきり親方はなにも言わず作業に戻ってしまった。
そのあと自分なりに本などで調べてみたが結局わからずじまいだった。
「さって、と」
魔石を懐にしまい直し、休憩は終わりと立ち上がり荷物を背負う。
「よしっ!」
気合いを入れ直し、ミュウは山登りを再開する。今回採掘するポイントまであと少し。昼までには着きたいので少しだけ早足で登っていった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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因みに次回は来週土曜に投下します!!