プロローグ:身近な人間...
はい。例の怪しい男の正体が判明します。いや、もう真下に誰だったか書いてありますけどね。
そこに居たのは男性だった。
しかし、私はその人を知らない。
いや、正確には知っているような気がしなくもないが何故だか思い出せない。
そんな感情を抱かされた。
「沙夜ちゃんだよね?覚えてるかな?」
「僕の名前は高野兵吾、しがない探偵さ。君のお父さんとは古くからの付き合いでね。」
そんなことを言った瞬間私の中で一つの結論が出た。
こんな人は知らない。
父の知り合いだというが、今まで会って来た人たちとは明らかに違う雰囲気を感じた。
だが、初対面の筈なのに何故だかそうだとは思わせない。
不思議な感じを周囲の人間に与える男性。
「あれ?僕の事覚えてないみたいだね。うん、まぁ君が小さい頃に1度しか会った事は無いから無理も無いかな。」
高野兵吾と名乗った男はそう言った。
「高野兵吾さんっておっしゃいましたよね?あなたのような人に会えば流石に人の顔と名前を覚えるのが苦手な私でも、忘れないと思うんですが、何歳くらいの頃にお会いしましたか?」
私の質問に、高野兵吾は笑顔で答えた。
「君が3歳で勇也くんが6歳だね。君は確か、今は高校1年生になったんだよね?いやぁ〜年が経つのは早いな〜」
どうやら、この男性もとい不審な男は兄も知っているらしかった。
「父は、まだ仕事で帰って来てませんが、父にどういったご用件でしょう?」
「あぁ、今日はお父さんではなくて君に用があるんだよ。」
「青、説明よろしく。」
そう言うと、いつから居たのかそこには1人の女性が立っていた。
私のほぼ真後ろに。
「沙夜さま、お初にお目にかかります。兵吾様の従者をさせて頂いております、青柳と申します。以後お見知りおきを。」
そう一礼して来た。
何だか、透明感のあるこの人も少し不思議な...少しどころではない。今の今まで私が気づかなかったのだ。ほぼ真後ろに居たのにかかわらず。
一先ず、この女性の事は置いておこう。今はこの高野兵吾。自称探偵。見るからに胡散臭い男の事だ。
青柳さんが従者ってことは、この高野兵吾って人はそれなりの社会的地位をもっている人なのだろうか。この青柳って人も同じく胡散臭い人間なのだろうか。
そう思ったが、挨拶されては礼儀として返さないわけにも行かず。
「木嶋沙夜です。」
っと一言そう名乗り頭を下げた。
「で、話というのはね。勇也くんのことについて何だけど。」
どうして私に会い来て話の内容が兄の事なのだろう?
そう不思議にに思っていると兵吾はそれに気づいたらしく
「あぁ、実は勇也くんは今無職になってるんだ。それは知ってるかな?」
「父から聞いたので知ってます。」
「うん、そうかそうか。なら、例の婚約の話も知ってるかな?」
「えぇ...でも、どうして兵吾さんが知ってるんですか?」
にっこり微笑み唇に指を当て
「それは、僕が探偵だからさ。」
っと一言そう言った。
探偵っていうのはミステリー小説の定番の役柄だ。
しかし、何故だか私はその一言に納得出来なかった。
「どうして、そんな嘘いうんですか?」
っと、思わずいってしまった。
その言葉を聞くと兵吾は
「へぇ。どうして僕が嘘を言ってると思うんだい?」
「兵吾さんの言葉からは何故だか真実身を感じますが、それはでも一部分だけで全てが本当だとは思えないからです。どうしてと言われても何となく...です。」
兵吾は少し考え
「成る程成る程。やっぱり、木嶋の家の子だね。直感力がすごいや。」
そう言った。
この男は認めたのだ。
自分に対して自分が嘘をついているという事を。
「探偵どうこうってのは置いておくとして、兵吾さんは私にどういったようなんですか?正確には私たち兄妹に。」
その言葉を聞き兵吾は即座に
「いやぁ〜色々と困るんだよね。勇也君が今<菱>と繋がっちゃうのは。ほら、あの<菱>だし。」
先程から、この兵吾という嘘つき男は<菱>を知っているかのような口ぶりだ。そう思い私はたずねた。
「兵吾さんは<菱>のことを何か知ってるんですか?」
兵吾は少し意外そうな顔をして
「逆にその反応だと、沙夜ちゃんは知らないって言ってるような物だけど、お父さんから話は聞いてるでしょ?」
そう聞き返して来た。
「父は私には教えてくれません。私の方の相手の浮島というのには私は心当たりがありますが...」
兵吾は沙代にそう言われ納得をしたように1人うなずいた。
「沙夜ちゃんのお兄ちゃんである勇也くんのお友達の敦君の事だね。でも、おかしいな?」
「何がおかしいんですか?」
どうせこの男の言う事だ。また、一部分だけ本当で後はフェイクだろう。そう思っていると
「いや、だって...二人の花嫁は既に面識ある筈だよ?」
「二人の花嫁?」
兵吾のそのワードに思わず聞き流すつもりが聞き返してしまった。
兵吾はさらに顔をほころばせ笑顔で
「あっはははは。そう言う事か。成る程ね。うん、納得したよ。全て納得。でも、君も大変だね。あ、これから大変になるのか。」
兵吾はそう言い1人納得し笑い続けていた。
何を言っているのか全くわからずに兵吾に説明を求めようとすると一本の着信が兵吾の電話にきた。
私に断りを入れ電話に出る兵吾。
「お嬢。すごい面白い事になってるよ。二人の花嫁。うん、わかった。帰ったら詳しく報告するね。」
そう言い電話を切った兵吾。
説明を求めるタイミングをずらされ黙ってしまった。
今のは電話に出すべきでなかった。
そう後悔した。
2分くらい沈黙していると兵吾が
「うん。知りたい事も知れたし帰ろうかな。」
そう言って青柳と2人で帰ろうとしたので
「二人の花嫁って何の事ですか?」
っと聞いた。
タイミングを逃されても、ちゃんと聞けた。
兵吾は
「ふふっ。流石に当事者で何も知らないのは可哀想だからヒントだけ。二人の花嫁ってのは、とある家の風習みたいなもんさ。ある意味、儀式であり役割かな。ほら、儀式で言う所の巫女さん的な感じ。あ、いや表現に語弊があるかな。人身御供って奴だと思えば良いよ。後は、君の幼なじみの光乃くんに聞けば良いと思うよ?」
想定外の言葉に唖然とした。
「人身御供?それって・・・どうして、静の名前が?」
そう言うと先程から黙っていた女性、確か青柳さんが私に
「沙夜様。兵吾様は次の予定が近づいておりますので申し訳ございませんが本日はこの辺で失礼致します。」
っと、一礼して来た。
そう言われると、時間に追われる忙しい父を見てる身、引き下がるしか行かず大人しく引き下がった。
兵吾と青柳が去った後1人考えた。
静が何か知っている。
そうだ。思い返せば放課後に静と沙織が話をした時、静は何か知っているような態度をとっていたではないか。
私は自然と静の家に足を運んだ。
次回、物語が遂に動き出します!本編よりかなりハイペースです。キーパーソンは幼なじみの静君!