プロローグ:お悩み相談...
勇也の妹の沙夜視点、父親から渡された1枚の手紙、それを読んだ次の日の話です。
手紙を読んだその日の夜、誰にも相談する事も出来ず悶々とした時間を過ごした。
そして例の件があった翌日、今私は学校に居る。
時刻は13時10分。そう今は昼休みだ。
私は自分の机に肘をついて外の景色をボッーと眺めていた。
そんな私を見かねてか、友人の沙織が話しかけて来た。
沙織とは小さい頃からの仲で私がコッチに帰って来る際に一緒の学校に通う事になったと知って一番喜んでくれた友人だ。
「沙〜夜。何をそんなボッーと考え事してんの?」
「いや、別に対した事じゃ...」
「たいしたことないのにそんな沙夜がボッーとしてるわけないじゃん。困ったときは、お互い様なんだからあたしでよければいくらでも相談のるかんね。遠慮する事無いし。ね?だからさっさと白状しろ〜」
そういって沙織は私の体をくすぐってきた。こういう時にこのこの存在は本当に助かってる。
「あはははは。わ、わかったから。も、もうやめて。白状するから!」
「ふっふふ。最初からそう言えばいいのよ。で、どうしたの?」
沙織は散々私の体をくすぐりその行為に満足したのか、そう聞いて来た。
「ちょっと、面倒ごとだから他言は避けて欲しいんだけどいい?」
「あ〜沙夜が言うなら相当だね。うん、わかった。」
そう沙織が相づちをうってくれたところで、5限目の始業開始のチャイムが鳴った。
「あちゃー。続きは後で、放課後に聞くから〜」
そう言って、沙織は自分のクラスに帰って行った。
放課後--教室にて
さっそく、沙織が訪ねて来たので一緒に帰る事にした。
ただ、面倒ごとは極力避けたかったので場所を変えようと二人で帰ろうとするとクラスの男子が話しかけて来た。
「お?さおちゃんとさよちゃん。どっか行くの?俺等もすっげぇ〜暇してんだよね。よかったら、今から遊び行かない?」
名前を正直覚えてないレベルのチャラ男だった。
誰だったかな?っと考えていると
「おいおい、将〜お前全然印象無いぽっいよ?大丈夫なのか〜?」
その男は、友人に茶化されていた。
だが、まさるという名前に心当たりは無かった。
と、一生懸命思い出そうとすると沙織が
「ど〜でも、いいけど佐々木さぁ〜。本当に空気読めないよね。今からあたし達二人で遊ぼうとしてるから。だから、アンタ達とは遊ばない。んじゃね。」
そう言い沙織が私の手を引いて帰ろうとした。
「いやいやいや。さおちゃ〜ん。お前こそ空気読めよ。ここで帰られたら俺のプライドがぼろぼろになんじゃんね。んなのあり得ないでしょ。」
そう言って両手をひろげ私たちの進行方向を妨げるようにしてきた。佐々木将
何度思い返しても、記憶に無い。
所詮その程度の男なのだろう。
いい加減どうしようか悩んでると
「さ〜よとさ〜おじゃん。何してんの?」
同い年で身長180オーバー。私たちの幼なじみの1人で唯一の男である、光乃静だった。
沙織が静が来たのを見てとても悪そうな顔をした。
こういうときの沙織は正直誰にも負けない。
以前この顔になった時、秋葉原の絵画を売りつけるセールスマンを完膚なきまで叩きのめしてしまった。
もちろん、沙織は暴力は使わない。言葉で、だ。
詐欺まがいのセールスマンを15歳の女子高生が叩きのめすという絵は実にシュールだった。
その時私が思ったのは、この子の将来が心配だということだ。
有り難うといった感謝の感情よりも詐欺まがいのセールスマンを口で叩きのめす彼女の将来を心配してしまった。
そんなことを思い出していると
「あ、セイ。いやぁ〜なんかさ、佐々木が私と沙夜の至福の一時を邪魔しようとすんだよねぇ。ちょっと、セイからも何か言ってくんない?」
静の顔もまた悪そうな顔になった。
どうして、私の幼なじみはこんな変わった人ばかりなのだろう。
私はこんなまともなのに。類は友を呼ぶというのは実はそんなことはないのではないだろうか。
そう考えていると静が佐々木軍団(仮)に話しかけた。
「佐々木。二人に何か用なの?」
佐々木軍団(仮)はバツの悪そうに
「いや、別になんでもねぇよ。んじゃ、俺等帰るわ。」
そう言って蜘蛛の子を散らすように逃げた。
佐々木と静は、入学式で揉めて静が圧勝した。
佐々木はその際に、佐々木軍団(仮)を引き連れ5対1だった。
にもかかわらず、静に完敗した。
それ以来、佐々木軍団(仮)は静に頭が上がらなくなったようですぐに逃げるといった感じだ。
さっきまで、非常にしつこかった佐々木は私の中でいつの間に佐々木(笑)になっていた。
明日にはまた名前も忘れてそうな気がするが。
私がそんな事をぼんやり考えているとその間
静は沙織と話をしていた
そして、話が終わると静は、何故か非常に辛そうな顔をして
「そうか。もうそんな時期なのか」
そう一言言った。
ん?静は何か知ってるの?
そう思い聞こうとしたら静は
「沙夜と沙織の至福の一時を邪魔するわけにはいかねぇから俺、先に帰っとくわ。んじゃ、また明日な。」
そう言ってすぐにその場から居なくなった。
沙織になにかあったのか聞いてみても沙織にはわからないそうだ。
沙織が静と会話していた内容は
「沙夜がボッーとしてるから問いつめたら何か相談があるらしいんだよね。今から、その相談に乗ろうと思うんだけど静も一緒に来る?」
「いや。多分俺には話しづらい内容だろうし大丈夫そうならまた、今度教えてくれ。」
っといったものだった。
たまに静は、少しだけおかしな様子になる。
何かあるのだろうか。
っと、今は私の問題を沙織に相談しないとだった。
これが落ち着いたら静に問いつめよう。
そう私は1人決心した。
カラオケ店--個室
あの後、私は沙織と二人でカラオケの個室に入った。
別にカラオケって気分ではなかったが沙織が歌いたかったらしい。
こういうところは、本当に有り難い。
一通りカラオケを堪能してドリンクを飲んでいると沙織が唐突に
「で?どんな内容なのさ?」
っと聞いて来た。
不意打ちだった。
言われた瞬間飲んでいたいピンクジンジャエールを吹き出してしまった。
沙織はそれをみてケラケラ笑っていた。
私が不機嫌そうな顔をすると沙織は
「あははは。ごめんごめん。でも、本来今日ってそのためにココきたんでしょ?なら、別に吹かなくてもよくない?」
正論過ぎて何も言えなかった。
しかし、時と場合は考えて欲しかった。
せめて、私がジュースを飲み終わるまでとか。
ま、沙織がそういう人間だというのは知ってるので言うのは諦めた。
「なんかね。私、結婚しないと行けないかも。」
沙織の目が点になった。
「え?沙夜、何言ってんの?」
まぁ、こうなるでしょう。
私もそうなった。
「いや、お兄ちゃんか私のどっちかなんだけどね。」
そう言うと沙織は笑顔になって
「なら、勇也さんじゃん?沙夜まだ、未成年だし。ってか、勇也さんと連絡着いたの?」
あぁ、そういえばその事についてもまだ言ってなかった。
「そうそう、昨日勇兄から電話あったの。」
「へぇ〜勇也さんなんだって?確か、都内の企業に就職したんだよね?ゲーム会社だっけ?」
「うん、何か辞めたみたい。」
「え?マジで言ってんの?」
「らしいよ。お父さんが言ってた。」
「今何やってんの?ま、まさかNEET?じゃないよね?」
「多分それだよ。」
「ってことは、時間あんのかな?遊び連れてってもらおうかな〜。」
「いや、どうだろ。別に私が直接電話で話したわけじゃないからわかんない。」
「それとこれがどう沙夜が結婚しないといけないって話に繋がるの?」
「いや、脱線させたのあんたでしょ。」
「あ、そっか。ごめんごめん。」
「まぁ、お家騒動だよ。」
「あぁ。そういうことか。」
私の通っている私立のこの学校は、わりとお家騒動で途中で結婚して休学か退学する生徒がいる。
なので、この一言で沙織は察したみたいだ。
沙織に至っても、父親が政府のお偉いさんなのだからいつその話が来てもおかしくはない。まさに人ごとではない。
「相手はどこの誰なの?あ、これ言っちゃって大丈夫?」
「先に聞いておいて、そこ確認するの?」
「それもそうだ。んじゃ、さくっと言ってみよう!」
「私が結婚する相手は、浮島敦さんだって。」
「あれ?勇也さんのお友達の敦さん?」
「うん、そうらしい。」
「敦さんかぁ。沙夜も苦労するだろうね。」
「え?どういうこと?」
意外な一言に思わず沙織に聞き返してしまった。
沙織は不思議そうな顔をして
「え?だって、敦さんめっちゃ女遊び派手じゃん。」
「そうなの?ってなんで、沙織が知ってんの?」
「敦さんの叔父さんの麻倉財閥のパーティーで敦さんがガールフレンド?を2~3人はべらせてたのみた事あるし。」
「あぁ、沙織のお父さんに言われて無理矢理参加させられたって言ってたお金持ちのパーティーってそれのことなんだ。」
「そうそう。しかも、その後、敦さんのパーティーに来る招待客って男の人より女の人の方が圧倒的に多かったよ。ほら、あの女優の北條美雪さんとか。」
「へぇ〜そんな人もパーティーに来るんだ。」
「まぁ、福岡の浮島家の長男だしね。今って会社を経営して多分更にすごいことになってんじゃないかな?」
「敦さんかっこいいもんね。」
「いやぁ〜羨ましいな〜。どっかのあぶらぎったおっさんじゃないだけでも良いってのに。それがあの敦さんとか」
沙織はため息をついた。
「沙織は、敦さんの事がすきなの?」
「いや、ないね。女遊びは20くらいで卒業してくれるならいいけど、無理でしょ。」
「なんだぁ。沙織が代わりに結婚してくれたら結婚しなくていいと思ったのに。」
「おっ?沙夜は親友である私を売ろうとしてるのかぁ。そうかぁ。沙夜はそういう子かぁ。」
演技めいた口調で沙織が呟いた。
この場合はスルーするに限る。
「あ、今の流れはあやまるとこでしょ?スルーとかないでしょ〜」
「ごめんごめん。」
「ま、別にいいけどさ。勇也さんの相手って沙夜知ってんの?」
「いや、名字くらいしか知らない。」
「へぇ、なんて名字なの?」
「ん〜っと確か、<菱>って名字」
その名字を聞いた瞬間沙織は突然よそよそしくなった。
「へぇ〜聞いたことないなぁ〜」
この反応は何か知ってるときの反応だ。
「そっか。沙織は知らないのかぁ。」
「うん、ごめんね?」
「ならどうして、そんな棒読みで聞いた事無いって言ってるの?」
沙織は非常に困惑した顔をしていた。
「ごめん。こればっかりは、お父さんに口止めされてるの。」
「え?沙織のお父さんが沙織に口止めするレベルなの?」
「うん...絶対に言っちゃダメだって。あ、でも敦さんなら知ってるんじゃない?敦さんなら、もし知ってたら教えてくれるんじゃないかな?」
「う〜ん。今度、機会があれば聞いてみるよ。」
「本当にごめんね?でも、そっか〜勇也さんが...」
沙織がぼそっと何かを呟くと同時に退出時間10分前の電話が鳴った。
丁度、話のキリも良かったのでここで打ち切り店を出た。
帰宅中--自宅近辺
店を出てから終始無言になった沙織と途中で別れ、私は帰路についた。
自宅の100m圏内に入った所の曲がり角で、1人の男性に話しかけられた。
1人の男が沙夜に話かけて来ました。さて、誰でしょう?