序章 幕開け
新作!
しかし作者は不定期更新大前提!!
それでも見ていただける暇な方なら大歓迎!!!
・・・最悪途中で終わることも覚悟してくださいね(というかそっちのほうが確率高いかもw)
目度としては一週間更新を目指したいと思います。
世界には『理不尽』とか『不条理』といった言葉が溢れている。
時に、罪無き子が虐待を受けたり。
時に、他人の責任をなすりつけられたり。
時に、何気無い日常の中に猛スピードで車が突っ込んだり。
それは全く予期できず、また被害者本人に非がある訳では無い。
しかし今日もどこかで、『理不尽』が産声をあげているのだ。
そして、この物語もまた、とある『理不尽』から始まるのである。
晴れだ。
途轍もなく晴れだ。
ありえないくらい晴れだ。
肌が焼けてしまうほど晴──
パコン!
「ほら灯磨、いつまでもうだってないで、早く行くよ。」
「痛っ!」
灼熱の如く降り注ぐ太陽光に恐れ戦いていた俺の頭から、何かで叩かれた、パコン、という音が漏れた。
音源・・・というより、後ろを振り向いてみれば、少し気の強そうな整った顔立ちの女子が、右手に持った革靴を振り切った姿勢で立っていた。
胸元の名札に城達 梨衣菜と書いてある。
間違いない。俺を叩いたのはコイツ以外にありえない。
「梨衣菜、革靴は人を叩くものじゃないぞ?」
「灯磨、暑くてうだってるのはわかったけど、太陽は人間を苦しめるためにあるわけじゃないんだよ?」
地味に皮肉るつもりが、逆に同じ口調で言い返された。腹立つ野郎だ。
「ま、部活に入らずに家で冷気を浴びることが日常化してる灯磨からしたら、外に出るのは少しキツイのかもね。」
おまけに追撃までついてきた。言っていることは事実だが、それだと俺が引きニートだと言っているように聞こえる。
「一応言っておくが、俺は体育の成績も含めてオール5だかんな?」
確かに、帰宅部所属で家に帰っても友達とゲームするか本を読むかのどちらかの選択肢しか存在しない。
が、トップには及ばないにしても、俺はそれなりの体力がついている。平均よりはずっと上の方にいるはずだ。
「体力はついてても暑さに耐性はないでしょ? 私はそこを指摘してんのよ。」
「・・・まあ、否定はしないが。」
これ以上この話を続けても俺に得はなさそうなので、彼女が言っていることを認めてこの話を打ち切る。
問題は続く話題に何を持ってくるか、だ。
ここで話題性の薄い話を持ってこようもんなら、さっきの話を掘り返されて俺のプライドがズタズタになってしまう。自らの心の安全のためにも、それだけは避けておきたい。
梨衣菜が食いつきそうな話題といえば・・・
「そういえば梨衣菜、こないだ行ったクレープ屋でまた新作が出たらしいぞ。」
「え、マジ!? 灯磨、今日奢ってくれるって!?」
ふむ。
どうやら、お財布を守るか、己の心を守るかのどちらかの選択しかなかったらしい。
なんとも理不尽な選択肢だ。
まあ財布を守って女性恐怖症になるよりはマシだろうが。
「しかし・・・今日はいつもに増して暑いな。体が溶けそうだ。」
「そうだねー。今日は確か、最高気温更新の日だったような気がするよ。」
「気がするって・・・お前なぁ・・・。」
ゆらゆら揺れる陽炎の中を、梨衣菜と歩き出す。
校門を出て他愛もない会話をしばらく歩いていると、俺は何かの違和感に苛まれた。
いつも歩いている道、いつもと代わり映えのしない風景。
そのはずなのに、何か、どこかがおかしい。
なんだろうか。
そんな俺の様子に気づいたのか、梨衣菜が足を止めて聞いてくる。
「どうしたの? 何か気になることでもあった?」
いや、何も、と答えようとした俺は、視界の端に映るものを見て喉が干上がった。
横断歩道の奥から迫ってくる車──これはまだいい。問題は、
その横断歩道に恐らく熱中症で倒れている、少し年をとったお婆さん。
車がスピードを緩めないところを見ると、どうやら人がいることに気づいていないらしい。
急な展開に、頭が真っ白になる。
今から本気で助けようと思えば、あのお婆さんが轢かれるのはギリギリ免れるはずだ。
しかし、その後に自分が避けるほどの時間は──
勝算を頭で理解するより、体の方がいち早く動いた。
手に提げていた通学鞄を放り投げ、数メートル先に倒れているお婆さんに向かって走り出す。
危ないよ! という梨衣菜の制止の声も振り切り、あとほんの少しの場所にいる人物の場所へ駆け出す。
少々強引だが、転がせばまだ間に合うはず──!!
必死に動いた結果、なんとかお婆さんを車道から歩道へ移すことはできた。
だが、俺に残された時間は、車を避けるにはあまりにも短すぎた。
ふと運転席を見てみれば、どうも余所見をしていて反応が遅れたらしい。必死にドライバーがブレーキをかけているのが見えるが、その対応はあまりにも遅く、意味のない行動だった。
──脇腹から運動エネルギーを受け取った俺は、無様に転がりながら電柱にぶつかってとまり、そのまま意識を消した。
これが、俺こと甲斐田 灯磨の第2の人生──空間認識力歪曲型仮想現実実現体(Spatial awareness power Distortion type Virtual reality realization Object) 通称、【SDVO】と呼ばれる世界での、壮絶な戦いのはじまりだった。