表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

灰色の魔導師シリーズ

灰色の魔導師と闇の公子~闇の者たちの邂逅~

作者: 麻生愛海

地底の国の話は前篇の「灰色の魔導師」をお読みください。

「何故だ…。どうしてオレがこんなことを」

とぶつぶつ言いながら魔導師はとある暗い道を歩いていた。ここは地上から地底の国に降りる連絡通路。

ここは人であるオレが行ったら大変なことなのだろうが。この「地底の国」というのは人間の世界である地上の世界の裏側にあるところである。そこは一筋の光さえも通らない場所。オレは自分に暗視の魔法をかけながら彼は向かっていた。そもそも彼は一体なぜ不平不満言いながらやってきたのだろうか?

その言い訳がましい彼の弁解を一つ聞いてもらいたい。

 

 オレは力というものを追い求め最高の魔導師として大成するという大きな野望を抱いていた。


 だがだが…

深い海の蒼の瞳に灰色の髪の端正な顔立ち。何も憂うものがないはずの彼は顔をくもらせていた。

なのになのになぜ?という疑問が彼の頭の中にさっきからよぎっていた。


何故あの野郎のせいでオレがこんなこんな勇者面倒なことをしなければいけないのだ―!?

「だー!!」とついにおたけびをあげた。彼は常に冷静沈着を自認(?)しているが、意外と気が短いことに全く気付いていない。それが幸いか不幸かは分からないが彼は立ちつくし頭を抱えた。さっきまで

「どうやって力を奪おうか」と色々と思案していたのは一体どこの誰だ?この陰気臭い地の国の雰囲気に

さすが闇と静寂を好む魔導師も気が狂ったのだろうか?

 

 ところでここで彼の嘆いていることをまとめるとどうやら面倒くさいことでいいことをある人物に押し付けられたらしい。そもそもの発端は「最高の力を手に入れる方法を教えてやる」と言う話にのったことが発端であった。(うまい話には裏があるというのに)

闇の貴公子なる人物が気まぐれに自分を誘い込んだのである。非常に彼はその人物を嫌悪していた。

 

だって…。関わるとろくでもないから。

  

 「あの何を考えているのか分からない根性曲がりの性格最悪魔族のめ!」ときっと上を見上げ今自分を

のうのうと見物しているだろうその人物に非難と憎しみの目を向けた。

 

  奴との出会いがそもそもの悲劇の始まりであった。あれは美しい満月の夜遅いころ。オレはいつものように魔術を極めるべく修行し野宿する場所を探して野道帰りであった。

「ふぅ~今日はあまり収穫なかったな。さっさと寝て明日大物を狩りに行こうか」とため息つくと、オレの研ぎ澄まされた勘に訴えかけるものが生まれた。あたりを見渡せば自分から向かって左が森で、右がの腹が広がっている。彼は自分の勘に触ったものが何なのか探るために眼を閉じ意識を傾ける。

「何者だ?オレに何の用があるってだ?」答がないかもしれないことが承知で誰何の声を上げる。

ざぁぁあ…。

その時森の方から風がざわめく音がする。とてつもない圧倒されるような気配が森の奥から漏れ出している。この力は魔力か…。ほぅ。オレが狩るのにふさわしい獲物ってことか?

ほくそ笑むと同時に不信を感じる。あの時感じたものは明らかにオレに意識して向けられたものだった。

それに気配の漏れ方がまるで誘い出しているような感じがする。こっちまでこいと

(まさか魔界の大物がこのオレにあいにきたっていうのか?)

と色々と考えているうちにそう結論にいたり、近づくのをやめた。

オレは誰にも縛られない命令されない魔導師だ。その自負が天よりも高く海よりも深かった。

オレに会いにきたならばそっちからくるがいい。

「まさか魔界の大物が直々にオレのような弱弱しい人間に会いに来るとはな。何用か?」

と呼びかける。すると気配が強まりそして近づいてきた。

「ほぅ。伊達に魔導師をやっていないか。さすがだな」と低く称賛する声。その声に威厳と畏怖が襲いかかってくる。「察しの通り私は「闇の貴公子」と呼ばれているものだ。」

「闇の貴公子…だと」と訪問者の名を聞いて記憶をたどる魔導師。どこかで聞いたことのある名だ。

この世界では不可思議な力のある者は自分の本当の名を不用意に教えない。

だから通り名で呼ばれているのが普通だ。この「闇の貴公子」も通り名だろう。

「闇の貴公子・・・。あぁ魔界の王の世継ぎの息子か」

「ほぅ。わが名がお前に届いているとはうれしいものだな。」

「何を考えているのかわからない人間の運命をもてあそぶのを好む悪趣味な男だと風の噂に聞く」と言えば、「何だと?」とあからさまに憤慨したような険がある反応が返ってきた。

「ふん…。」

「声」は先程覚えた感情の揺らぎを相手に見せないべく不愉快そうに鼻を鳴らす。だが「声」にとってそれは奇妙な快感を覚えるものだった。「私に対し何でも平気に言えるのは興味深い。誰にも縛られないそれがお前の信条だという情報はたしからしいな。」「してオレの運命をどのように弄ぶのやら?そのためにわざわざ会いに行ったということか?」

と挑むように冷笑していった。「声」は沈黙する。別にそのつもりもなかったわけではないが......。


しかしこの男ますます面白い。今までのよりもこいつの運命の行く末を見た方が楽しそうだ。いろんな意味でおかしそうに心の中で笑った。

「大体姿を見せろよ。オレに会いに来たというのならば礼儀だろう」と不愉快そうに文句まで言った。魔すます声は興味を持った。私の姿は魔界の者でもめったに見れるものではないのに、それをこいつは無礼に要求するとはな。この反抗的な態度私を見ても揺るがないその姿に賞してみせてやろうか。

 「了解した」という声と同時に黒髪の長髪の男が現れた。血のような赤い眼と白い肌以外は黒。

切れ長の蛇のような目。端正な顔はこの世とは思えない美形。耳だけは三角であることから男が人間ではないことが分かる。堂々とした態度誰もがひざまずきたくなるくらいだ

…と隅々まで眺めて彼はそう公子の姿をそう評した。

「わが名はというよりこれは王位を継ぐものに受け継ぐものだから個人的な名ではないが「サタン」。自称「闇の貴公子」または「夜の君」としている。」「自分で貴公子というなんざ高貴な者とじふしているな」と軽口叩く。それを聞きサタンは口の端を釣り上げて面白そうに笑う。「おもしろい男よの。お前の運命の行く末に面白い相がでている。弄ぶつもりではない。遊ぶのには少々癪に障りそうだし痛い目にあいそうだ。私はお前の名を聞き会いに来ただけ。ここ数日お前を拝見させてもらった。」

「のぞき見とは悪趣味なものだな」と皮肉を言いつつ彼はそうだったかと納得した。

オレはここ数日ときどき誰かに見られているような気がしたのだ。一体何を見たというのだ?こいつは。

まさかオレの寝像や体までじっくり丹念に見ていたら変態というものだ。

サタンにもそれが伝わったのか不愉快そうに眉をひそめた。

「よからぬ想像をするものではない。この私に向かってそのような口のきき方するのは無礼ではないか?」

「それはお前もだろう。で?わざわざそれを言いに来たのではなかろう?サタンよ」

話が何だか遠回りになってまどろっこしかった。できれば早く立ち去りたいものだ。

「お前の力を少々試しにきただけだ。」とややむっとしつついましがた思いついたことを答えた。

 この男は少々いろんな意味で憎らしい。ますます我に跪かせてみたいものだ。最初はどんな奴か見に来ただけなのに気が変わったとサタンは荒んだきもちになる。こんなの久しぶりだ。同時に奇妙な快感を感じた。

 こういう人間は嫌いではない。もしかしたら少々楽しめるかな?

心の中で皮肉でもあざけりでもない今までに味わったことのない気持からの笑みを浮かべていると感じた。魔導師のほうも「オレもあんたに弄ばれるのはごめんだぜ。全力で受けて立つから覚悟しろよ」とすでに魔力を高め戦闘態勢に入っていた。すると冷たい薄笑いを浮かべてサタンは答えた。その時彼の体から膨大な魔のオーラが吹きあがってきた。それは魔導師を圧迫しかねないほどに空間を切迫させていた。

「受けて立つか…。どこまでその態度が持つか確かめさせてくれる! こちらも手加減抜きだな」

「望むところだ!お前も見くびって泣き面かくことのないように覚悟しろ!」


 こうして方や魔界のトップクラス、方やトップクラスの魔導師の実力者二人による死闘がはじまった。

その戦いは亜空間と呼ばれる特殊な空間で行われたので当事者以外知ることはなかった。ここでは詳しく書かないが一方的にやられまくりの死闘だったらしい。戦いの火ぶたが切られて後三十分後に決着がついた。かったのはもちろんサタンのほうで、魔導師は血まみれになって倒れていた。1人が倒れたことで亜空間の魔法が切れ今は元の場所で戻っている。倒れこんでいる魔導師を眺めながら余裕綽々の表情で「まだまだか。だが見どころがあるなまた会いにまみえよう」と言うや否や音もなく自然と消え去った。その瞬間そこの空間の緊張が解けたような気がした。それはこの空間を圧迫していたものが消え去ったということ。完全にオレは大けがを負わされ、奴の強さに完敗してしまった。以上がオレと奴の最悪な出会いである。オレは奴にまみえるたびにいつも激しい戦意と敵意を燃やし地団駄を踏んでいた。

 

一体いつになったら奴に遊ばれなくなるようになるのだと。

そしてオレの誰にも縛られず自由に生きれるようになるのだと。


 そのためにも力をつけ神に斉しいと思われる奴に勝たねばならないと考えた。力と言うものはみな奪い

修行して強くなることで…。奴に会ってから余計にオレは修行に打ち込むことになった。ところで奴は初めて会ってから数年の間奴は会ってから色々と厄介事を押し付けてくる用になった。(もちろん報酬は破格だが。そうでなければ引き受けないのだ!)例えばめんどくさい人助けだったり時には天と魔界のもめ事に巻き込んで命がいくつあっても足りない思いをしたこともある。断ればいいのではと思うだろう。

 だが奴の押し付ける仕事はみんな魔術師のオレとして興味引かれる物が多かったし、ただ単に懐が寒かったせいでもある。

 だが…それがオレに敗北の味を味わせた奴のあっせんと言うのが非常に非常に癪に障る。またオレに何の積りで仕事を押し付けるのだ?あいつはと彼は今回も苦々しく思った。

 今回は地底の国に幽閉された不思議な力を持つ女がいるとのことだった。監禁趣味の地底の王に守られているということであった。どうやら彼女の美貌と力に惚れた幾多の挑戦者が救い出そうとしたらしいが皆失敗し無残な最期を遂げたらしい。故に彼女はお前にとって魅力なはずだ。お前も彼女を救いに行くがいいとのことだった。その話が「今まで働いてくれたお礼にお前にとっていい話をしてやる。」と言う前触れで…。

まったくもって気分が悪い。少女の力には食指が動くがなぜオレがあの野郎に言われなければいけないのだ。しかも「せいぜい頑張れよ」と奴は最後に意味深な笑みをたたえながらねぎらいの言葉をかけた。


そもそもオレはお前の部下ではないから、お前の下で働いたというわけではない!!


まったくもって奴の手のひらで遊ばれているようにしかみえない。何故だと思いながら彼は地底の国へ行った。地底の国に潜伏して王に関する情報を集めた。サタンが言うには「ここの王が不思議な力を持つ女を監禁することで悦に入っているのが気に食わないからお前をけしかけた」そうだが、

何故自分で行かないのだと思う。確かにオレも監禁趣味の男は好きではない。当初は彼女の力を頂いてあとは打ち捨てるつもりでいた。彼女に会うまでは……。


 だが彼女に会ってから自分の何かが大きく動いた。気づいた時は彼女を連れ出し力も取らずに激しい追撃から逃げていた。オレは何しているのだろうか?そもそも奴は何のためにオレにこんな話をしたのだろうか?

だが今となっては分からない。

なぜならばあれ以来彼はオレに姿を現さなかったからだ。時折気配は感じられても

 

 何故?興味が薄れたということか?


 だがもし奴に会ったらオレはこう言いたい。


オレはお前の手のひらで踊っていたわけじゃないんだぞと。

オレは己の信条を貫いたと信ずる。決して助けに行ったのも仕事を引き受けたのもオレは奴の手のひらに踊らされての事ではない。

 もし奴があの件の結末を知っていたとするのならば…。


そう思えば少々面白くない気持ちになる。何から何まで知っていて気持ち悪いと感じるからだ。

だがそれでもオレはオレはオレ自身で動いたと根拠ないがそう思っている。

 オレは誰にも命令されないし縛られない。奴の頼みを引き受けたのだって、元々奴を越えるための手段としていたためである。  

 奴との思い出は忌々しいばかりだが、ひとつだけ不思議に思っていることがあった。

それは


何故お前はオレに興味を持ち会いに来たのか?

 

今となっては知るすべもない。

 (完)

 



 

五月十三日に改稿しました。なぜ主人公の名前がないのかってきかれると決めていないからです。(候補はありますが)

 次回は多分公子視点で短編形式で書こうと思います。脱字・文脈の不整合があったらお知らせください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 文法や人物の描写や説明等々いいですね。 [気になる点] ストーリーの展開が早いですね。会話が少なく戦闘シーンも省略されてるのが残念です。 [一言] 今後の展開が気になります。次のお話し期待…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ