四節
「鈴音っ援護お願い!」
「了解」
弾薬の炸裂音が二度あった。爆発によって推進力を得、鈴音の持つ銃器のマズルから飛び出した二発の弾は、直線を描いて鳥型の機獣の両翼を撃ち抜く。そこで機獣はバランスを失い、惑星の重力にされるままに自由落下を開始した。
その好機を咲は見逃さない。その両手で握った日本刀を一振りし、機獣の急所である赤く煌めく一点を切り裂いて、断ち割った。
機獣のその後までは言うまでもなかろう。ただ沈黙して、地に叩きつけられるのみである。
「やったね! 鈴音」
「うん!」
二人はハイタッチする。
鈴音のパートナーは尾上咲。鈴音の姉だ。
年は二つしか変わらない。姉の咲は鈴音とは対照的なロングヘアーだ。
姉のメイン武器は日本刀だ、この世界ではかなり珍しい。
命の危険があるというのに姉と一緒だと何故か楽しく感じる。
私はこの幸せがいつまでも続くと、そう思っていた。
ある日、鈴音と咲は悪天候の中機獣と戦っていた。
機獣はサソリのような姿をしていた。弱点の赤い光沢は背中にあった。
「鈴音っ!あいつの目つぶせる?」
「うん!いけるよ!」
鈴音は今まで鳥やトラなど、動きが早い機獣でも絶対に外さなかった。だから絶対の自信があった。
「三つ数えたら奴の目をつぶいして!」
「了解!」
「一ッ」
機獣は両手のはさみを咲に向け、ふりかざす。
咲は右手のはさみをかわし、左手のはさみを日本刀で弾く。
「二ッ」
咲はもう走っていた。お互いを信用していなければ絶対に成せない技。
鈴音は標準を機獣の右目に合わせる。
「三ッ!!」
そう叫びながら鈴音は軽いトリガーを引いた刹那。
──カンッ
金属と金属が猛烈な勢いで衝突するような音。その音を耳にして直撃を確信した鈴音は、現実を見て驚愕した。
目が、潰れていない。弾丸は確かに機獣の目を捉えたはずなのに、なのに機獣の目を射抜くことが出来なかった。
――否、正確には射抜いていたのである。そう、目、を、欺、く、幻、の、目、を。
「お姉ちゃん!?」
鈴音はまたしても驚愕した。咲の体に機獣の尻尾が刺さっていた。
咲は吐血し、意識が朦朧としている。
「そ……んな……ありえない……ありえない!!」
鈴音は訳が分からなくなっていた。
「お姉ちゃんが、負けるはずない。そう、これは幻よ。お姉ちゃんが負けるはず……」
鈴音は困惑して何も考えられず、その場に崩れ落ちた。
「逃げ……て……鈴……音…」
その時、咲の体を鉄くずが覆い彼女の面影はもう消えていた。
「お……姉…ちゃん?」
声を掠めながら問う。だが返事はなく、代わりに唸り声をあげる。
「ヴヴヴ……」
鈴音は涙目になりながら立ち上がり、銃を手に取った。
「うわあああああああああああああああ!!」
無我夢中で打ち続けた。膝に機獣の放った銃弾が当たるも打ち続けた。
「殺してやるっ殺してやるーーーーーーーーっ!」
その後の事はあまり覚えてない。
目の前には二体の機獣が崩れ落ちていた。
「お姉ちゃん……」
鈴音は誓った「絶対に機獣を殺してお姉ちゃんの敵を打つからね」