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騒擾閑化のティラトーレ  作者: いくら
人類機獣化計画
3/20

三節

 俺たちは亜麻色の髪の少女の隠れ家に案内され一晩過ごした後、話を聞いた。

亜麻色の髪を持つ少女は俺たちにとって未知の事実を淡々と、そして矢継ぎ早に話していく。そう、俺たちの想像を遥かに超えた現実を。

 内容としては、近頃機獣の弱点が一ヶ所ではなく複数になってきていることや、機獣の数が急激に増加して来ていることなど。そして何より俺たちを驚かせたのは、機獣はただの化け物ではなく、特異なウイルスに寄生された極一般的な動物たちだということだ。

「どう? 一通り話したけど少しは理解できた?」

 そう言って、少女は話に区切りを付ける。

「あぁ……驚いたが見ちまったもんは信じるしかないしな」

 そうなのだ。俺にとってはウイルス云々などどちらでも良いことであり、それより何より、あの様な怪物が存在しているということが問題。それの後付などあろうがなかろうが問題はなく、信じろと言われれば信じて差し支えない。……だがしかし、さっきの話には少し気になる部分があった。

「それより、あなた誰なの?」

 結衣の発言には、少々の苛立ちが感じられる。人一倍強い警戒心から来ているのだろうか。

「申し遅れました、私は尾上鈴音といいます」

 対して、鈴音は平静な態度で、ペコリと頭を下げる。その整った身形からは、清楚さが感じ取られた。

「俺は佐藤蓮だ、よろしく」

 唯一知っている名前を述べて、手を差し出し握手。

「私は中村結衣」

 俺に続いて結衣も手を差し出していた。それに鈴音はやはり落ち着いた様子で対応する。

 さて……単刀直入に訊いてしまおうか……。

「ところでさっきの話を聞いて一つ気になったことがあるんだが……。そのウイルスとやらは、もしや俺たち人間にも寄生するのか?」

 俺の発言に呼応して、辺りの空気が張り詰めた。ああ、何故だろうか嫌な予感がする。

「このウイルスは空気感染などはしません。ですが…………」

 そこまで言って、鈴音は黙り込んでしまう。そして場を支配したのは沈黙。その静けさが、俺の問に対する答えであることは間違いがなかった。

「……ですが?」

 けれども、待ちきれなくなった結衣が問う。鈴音の口から、確とした言葉が欲しいのだろう。いや、救いを望んだだけかもしれない……。

「……機獣の中には、そのウイルスを人間に直接植え付けることが可能な者もいます」

「なん……だと!?」

 答えは分かっていたが、俺は驚愕した。横では結衣がポカンと口を開けている。

「植え付けられた奴らはどうなる……?」

 恐る恐る言の葉を紡ぐ。訊きたくは無いが、聞かねばならない。知らずに後悔するよりも、知って後悔した方がマシだから。

「そうなってしまうと、救う方法は今の所ありません……。寄生された者は機獣の様な姿となり、人としての自我は消え失せます」

「ッ!? 本当に……か?」

「はい、これは事実です……」

 鈴音は真剣な、そして今にも泣き崩れそうな眼差しでこちらを見、告げた。

 何といえば良いだろうか、言葉が見つからない。しかし、どうしてこの少女は、こんなにも機獣についての知識を抱えているのだろうか?

 俺がそれについても訊くかどうかを迷っていると、結衣が代わりに問うていた。

「鈴音ちゃん、なんで機獣についてこんな詳しいの……?」

「はい。話すと少し長くなりますがよろしいですか?」

 俺たち二人は、頷いて答えとする。

「では話します。…………私も昔はパートナーがいました」

 少女は語りを始め、小さな部屋には、これもまた小さき沈黙が走った。

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