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騒擾閑化のティラトーレ  作者: いくら
人類機獣化計画
11/20

十一節

 俺たちの目の前には何も見えない、ただ『何か』がいる。

そう、俺たちは目視不可の機獣と闘っている。恐らくはカメレオンか何かの機獣だろう。

ステルス能力を持つ敵と闘う場合は基本、円形になり、背中合わせで構える。

俺たち三人は背中を預け、各々が構えている。

敵の動きが見えない以上、微かな音で判断せざるを得ない状況だ。

俺はハルファスを右手で構え、鈴音はフルオート型ハンドガン、結衣は俺と同様にハンドガンを構えているが、腰の刀らしきものにも同時に手を添えてその時を待っていた。

「…………。」

それぞれが集中し、全神経を研ぎ澄ます。

数秒後、沈黙の糸が切れた。

恐らくは機獣が動いた音であろうガサッという音を俺たち三人は聞き逃さず、俺が音の方向へ発砲。

その後結衣が斜め左方向を撃つ。

生き物のは危険を判断する場合、鳴った音とは逆の方向に逃げる性質を持っている。

その性質を利用し、結衣が撃った方向とは逆方向を鈴音が乱射。

数弾がヒットしたのか機獣の姿が浮かび上がる。

案の定、カメレオンに類似した生物だ。

四足歩行の体勢に、複数の銃口がついた尻尾、闇を映し出すような漆黒の眼球、口元をよく見ると喉の奥の辺りに紅点。

「弱点は喉だっ!!」

俺が叫び、俺たちは喉に照準し、発砲。

嵐の如く降り注ぐ弾丸は容赦なく機獣を捉える。

だが敵もさながらそうやすやすと弱点を突かせてはもらえず、機獣の喉から銃弾が発射され、こちらの弾頭があっけなく撃ち落とされていた。

どうやら一度に発射される限度に到達したらしく、機獣はリロード体勢に入った。

その瞬間をチャンスだとは思ったが、タイミング悪くこちらもハルファスのマガジンを取り替えている最中だったため、反撃のテンポが数瞬遅れてしまった。

俺は出来る限り急いで装填を完了させ、目の前の気配へ体を向き直す。――その瞬間ッ――

シュッという金属音がしたと思った時には結衣が隣から消えており、機獣の喉を『刀』が貫通していた。

そのまま機獣は動力を失い、崩れ落ちる。

「結衣……なんだその刀は?」

俺は慎重に、結衣に尋ねる。

「いや~今まで黙っててごめんね。実は私刀使いなんだ」

「なんだってえええええええええええええええ!?」「なんですってえええええええええええええええ!?」

二人の声が重なり、森林の中に響く。

「そ、そんなにびっくりしなくても……」

結衣はてへへと笑いながら言う。

「びっくりするだろ!!いきなり刀使いだなんて言われたら」

俺は腹の底から驚愕していた。それは鈴音も同様だ。

それにしても結衣が刀使いという事にも驚いたが、その腕前は並大抵のものではない。

視認することすらままならない程の神速。

あの機獣とて遅いわけではない。ただ結衣が早すぎた……それだけの話だ。

結衣が刀使いという事実が分かり、陣形も変わってくる。

「少し陣形を組み直そう」

結衣と鈴音は同意し、しばしこの場で陣形を組み直すことになった。

これで近距離から遠距離までバランスよく揃った。

基本陣形は結衣が攻め込み、俺が援護、そして鈴音が仕留めるという流れに決まった。

その後は機獣と遭遇することもなく、この森の一通りの捜索は終わった。

俺たちは時間がきたので捜索ポイントの拠点に戻ることにした。

まだ一度目の捜索なのに死者が出てしまった事に俺は申し訳なさを感じつつみんなへの謝罪を考えていた。

拠点に着くと更なる驚愕が俺たちを襲った。

集合時間をゆうに超えているのにも関わらず、捜索前と比べ人が激減している。

捜索前と比べ、約三分の一程の人しか居ない。

「……っ!?」

言葉が見当たらず、喉で呻く。俺は辺りを見回し、浅間を見つける。

「おい……これはどういうことだ……?」

浅間はうつむきつつも答える。

「僕たちはやつを甘く見すぎていた……」

まるで死人のような目をしている浅間を見て俺はなんとなく悟った。

「あれは化け物だ……人間なんて領域を超えているよ」

まるで先ほどの浅間とは別人の様な雰囲気を醸し出している。

「なにが……あったんだ……?」

数秒の沈黙の後、浅間は口を開く。

「僕と一緒に居た仲間たちが……奴に殺された……」

道理で人が少ないわけだが、それにしても異様だ。

「それに奴は仲間を殺すときにこんな事を言っていたよ……」

「『記憶の欠落した人間って知ってるか?』ってね……」

俺は明らかに身に覚えがある。

「記憶の欠落?なんだそれは?」

内心同様しつつも冷静を装おって答える。

「僕にもわからない……」

「ただね、有力な情報もあるよ」

俺はすぐさま問い返す。

「聞かせてくれっ!」

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