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騒擾閑化のティラトーレ  作者: いくら
人類機獣化計画
10/20

十節

 目に眩しい光が差し込む。

俺の暗闇に慣れていた眼球が徐々に光を受け入れる。

「うぅ……もう朝か……」

昨日の疲れのせいか思いのほかよく寝れた。

今日からはいよいよ捜索が始まる……今まで以上に注意を払いながら行動しなければならない。

などと考えつつ身支度を始める。

小さなバックパックに保存食、ライト、ロープ、弾薬などを詰め込み、腰には手榴弾を装着する。

「なんか軍人みたいだな」

と自分に突っ込みを入れながら最後に右足のホルスターに愛銃ハルファスを入れ、身支度を終える。

目覚めきっていない目を擦りながら部屋を出るとちょうど結衣と鈴音も準備を終えたらしく、ほぼ同じタイミングでドアを開いて出てきた。

「おはよー蓮」

元気そうな声で結衣が言う。一方、結衣とは対照的に鈴音は

「おはよう……ございます……うにゅ……」

と眠そうな声で言う。

「おう、おはよう二人共」

俺も結衣に同じく、ハツラツとした声色で返す。

「今日から捜索だねーー。気合入れていこーー!!」

結衣がまるでピクニックに行くかの様な口ぶりで話す。

「あのなぁ……いや、なんでもない」

俺はいつもの癖で突っ込みをいれかけるが途中で止める。

結衣のこういう時でも明るく振舞う所が俺達に元気をくれる……そんな気がする。

と、考えながら廊下を歩き、広間へと向かう。

先ほどから気になっていたが、結衣は背中に刀らしきものを背負っている。

「結衣、背中のそれはなんだ?」

俺が素直に疑問をぶつける。

「ん?内緒だよーー!!」

と、笑いながら鈴音と走って広間まで行ってしまった。

「あれは確かに刀だったよな……」

俺は結衣が持ってたあの鞘みたいなもの疑問を抱きつつ二人の後を追う。

二人に遅れて俺も広場に到着する。

各々が準備を済ましてまばらに広場へと集まる。

それから数分後、全員が集合した辺りに浅間も来る。

「おはよう、みんな」

明るい挨拶を軽く済ませ、さっさと本題に入る。

「さて、今日の捜索について話すよ」

浅間は広間のスクリーンを降ろし、画面を映し出す。

「まずはここを中心にして半径5km以内を全員で捜索、その後ポイントを移しまた捜索……これをひたすら続ける」

随分とシンプルな作戦だった。果たしてこんな作戦でクロウリーは見つかるのだろうか……と思いつつも作戦の詳細を頭に入れる。

「先日も言ったんだけど、もし機獣に遭遇したら味方の到着があるまで隠れてやり過ごしてくれ。例え勝てそうな機獣だとしても戦闘の音を聞いて奴らが寄ってくるかもしれない」

皆が無言で頷く。

「本作戦の目的はクロウリーを見つけ出すことだ。ほかのことは頭から排除して、本作戦に集中してほしい」

浅間は皆の顔を一通り眺めてから言う。

「皆、絶対に死なないでくれ」

この台詞の後の皆の気迫が変わった……そんなような気がした。

「以上で作戦の説明を終了する。異論はないね?」

数秒の沈黙の後浅間は口を開く。

「作戦決行は今から30分後、各自バラバラにポイントまで来てくれ。それでは解散っ!」

話が終わり、皆広間から離れていく。

ある程度人がいなくなってから俺は結衣に先ほどの疑問をぶつける。

「結衣、その刀みたいな物はなんだ?」

結衣はこっちを振り向く。

「んー?蓮って私のメイン武器知ってる?」

そういえば結衣は戦闘時にハンドガンしか使っていない。

「そりゃ、ハンドガンじゃないのか?」

結衣はニヤけながら答える。

「ブッブーー!正解はねー……」

ここで結衣は言葉を切る。

「やっぱり後でのお楽しみだねー」

俺は今、結衣から若干のためらいを感じた。

俺はあえて深入りはせず、話題を変える。

「ところで鈴音、サブ武器は携帯してるのか?」

「はい、サブ武器としてフルオート型ハンドガンを一丁持ってます」

皆準備万端なのを確認し、集合場所へと移動する。



広間に着き、数分待っていると、一人の男がこちらに歩み寄る。

「はぁ~お前らが生き残りねぇ……」

その男の身長は180前後、筋肉質の男だ。

嫌味のように言ってきたその男の放つオーラはただ者ではない。

幾つもの戦闘を経験してきた……これだけはわかる、かなりの強者だ。

「お互いよろしくな」

俺は揉め事を避けるべく軽い挨拶で話を済ませた。

「さて、これから捜索に入るよ。やり方は先ほど説明した通り」

浅間は軽く確認の意味を込めて軽く話し、浅間の合図と共に皆が捜索を開始した。

俺たちは森の中を捜索している。

横目で結衣を見てみるが、先ほどのためらいを感じさせない様な笑顔で走っている。

右腰に刀らしきものを下げ、左足のホルスターに拳銃をいれてある。

鈴音は背中に狙撃銃を背負い、右腰にフルオート型ハンドガン、俺は右足のホルスターにハルファス一丁。

鈴音の事を考え、休憩はこまめにとり、その度に各自の武器の状態を確認、その後再捜索という流れでやっている。

捜索開始から小一時間が経過したが、クロウリーは愚か、機獣にすら遭遇しない。

俺はなにか嫌な予感がした。

「結衣、鈴音!ここからは歩いて進む。なにか嫌な予感がする」

「え?」

結衣の答えとは相反して鈴音は冷静に答える。

「そうですね……一時間弱捜索して機獣に遭遇しないのは少し変です」

鈴音の台詞を聞き、結衣も同意する。

歩いてみると随分物静かだ。

なるべく足音を消しつつ歩いていると、なにかを見つける。

「なんだ……これは……?」

俺たちの目の前には、罠……らしき物のすぐ後ろに複数の人が倒れている。

その中には見覚えのある顔が居た。

先ほど俺たちに絡んできた、あの筋肉質の男だ。

「そんな、あいつがこうもあっさりと死ぬはずが……」

確かにあいつは強い。俺にはわかっていた……少なくとも強者だったはずだ。

そんなあいつが死んでいる……しかも銃声は愚か、物音ひとつ聞こえなかった。

「一体どうやってこの方たちを……」

特に奇妙なのは傷一つないことだ。

外的攻撃ではない。ならば内部に干渉する能力か……。

死体だけでは判断できないのが現状だ。

鈴音は周囲に目をやるも特に異変は見られなかったようだ。

その時、空気が揺れた。

俺は危険を感じ、叫ぶ。

「構えろっ!!」

俺たちは戦闘態勢に入った。

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