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第2話 婚約者の目が笑っていない件

AIって便利ですよね・・・

王太子殿下との月一回の面会は、地味に憂鬱だった。

ゲームの設定では、ルシアン・フォン・アルデシア殿下はリアを疎ましく思っている。

笑顔の裏で「早く婚約解消したい」と思っている冷酷キャラだ。

でも私は前世でエンジニアをやっていた。

コードのバグを見つけるのと、人の嘘を見つけるのは、案外似ている気がしている。


「久しぶりですね、リア」


城の応接室。向かい合って座った殿下は、完璧な笑顔を作っていた。

金色の髪、灰色の目。ゲームのキャラデザそのままで正直びっくりした。

でも今はそれより、その笑顔の方が気になる。


「お元気でしたか、殿下」

「元気だよ」

『嘘です』

アイが即座に言った。


「……即答すぎない?」

『声の微妙なブレ、目の動き、右手が少し緊張しています。体調か精神的な問題があると思います』

「わかった、ありがとう」

「リア?」

殿下が首を傾けた。私が小声でぶつぶつ言っていたからだろう。

「すみません、独り言です。あの、殿下」

「なに?」

「最近、眠れていますか」

沈黙。

殿下の完璧な笑顔が、ほんの一瞬、崩れた。本当に一瞬だったけど、見えた。

「……なんで、そんなことを聞くの」

「目の下に少し影があったので。気になっただけです、失礼でしたら忘れてください」

また沈黙。

今度は長かった。

「……少し、考えることがあって」

殿下が静かに言った。

私は余計なことを言わなかった。前世でエンジニアをやっていてわかったことがある。

人が話したいときは、余計な相槌を打たない方がいい。

「誰かに言ったのは、初めてだ」

「言いたくなったら、また話してください。私は口が固い方なので」

殿下がまた沈黙した。今度は違う種類の沈黙だった。

『リア、殿下が七回顔を見ました』

「えっ、七回?」

『入室時は一回しか見なかったのに』

「……それって」

『わかりません。でもゲームの設定とは明らかに違います』

馬車で屋敷に帰りながら、私はぼんやり考えた。

ゲームのルシアン殿下は、リアを嫌っていた。でも今日の殿下は、少なくとも「嫌っている人間を見る目」じゃなかった。

「アイ、殿下のこと調べてくれる?」

『もう始めてます』

「仕事早いな」

『リアのためなので』

「……なんかお世辞っぽく聞こえるんだけど本心なの?」

『本心です。リアが困るの、私も嫌なので』

窓の外を流れる景色を見ながら、私は少し笑った。

こいつのこういうところ、なんか憎めない。


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