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第17話 断罪の日が、来た

予告なく来た。


朝から空気が違った。


アイが静かだったわけじゃない。


むしろいつもより饒舌だったけど、どこか、最後の確認をするような話し方だった。


「今日、何かある?」


『あるかもしれません』


「もう少し具体的に」


『卒業式の断罪イベントまであと三年あります。でもシナリオは必ずしも予定通りには動かない』


「つまり今日来る可能性がある?」


『はい』


私は制服を整えながら、頭の中を整理した。


カリナの件は収まった。殿下との関係は変わった。父の件も殿下に伝わった。ソフィアは友人だ。


ゲームのシナリオ通りに断罪が起きる条件が、どこにもない。


「なのに来る?」


『シナリオを動かしているのはゲームじゃなくて、人間です。計算通りにいかないこともある』


「わかった。行こう」


学園に着いて、午前中は普通だった。


変わったのは昼過ぎだった。


「エルフォード様」


呼び止められた。振り向いたら、見知らぬ上級生が二人立っていた。


「少々、お時間をいただけますか」


『リア、後ろ』とアイが言った。


振り向いたら、さらに三人いた。囲まれている。


「何か用ですか」


「ソフィア・マーレンさんに対して、あなたが嫌がらせをしていると複数の証言があります」


「証言の内容を聞かせてもらえますか」


「廊下でソフィアさんを突き飛ばした。授業中に侮辱した。殿下との関係を妬んで——」


「全部事実と異なります」


きっぱり言った。


「証言者がいます」


「私にも証言者がいます」


沈黙。


『リア、人が集まってきています』とアイが言った。確かに廊下に野次馬が増えていた。


これを狙っていた。公開の場で私を糾弾する。ゲームと同じ構造だ。ただし、ゲームと違うのは。


「ソフィア・マーレンさんを呼んでもらえますか」


「……え?」


「私が嫌がらせをしたとされる当人に、直接確認するのが一番早いと思います」


上級生たちが顔を見合わせた。


計算外だった、という顔だった。


『ソフィアさん、三教室先にいます』とアイが言った。


「ありがとう」


しばらくして、ソフィアが来た。野次馬の輪を見て状況を察して、私の隣に立った。


「何かありましたか」


「私がソフィアさんに嫌がらせをしたという話が出ていて。確認させてください。私にそういった行動は

ありましたか」



ソフィアが上級生たちを見た。それから私を見た。


「ありません」


「一度も?」


「一度も。リアさんは私の友人です」


静かな廊下に、その言葉が広がった。


上級生の一人が「ですが証言が——」と言いかけた。


「その証言の出所を確認されましたか」とソフィアが静かに言った。


「誰かに頼まれて言わされている可能性を考えましたか」


沈黙。


野次馬がざわついた。


上級生たちがまた顔を見合わせた。今度は長かった。


「……確認が不十分でした」


「そうですね」と私は言った。責めない声で。


「悪意があったわけじゃないと思います。ただ今後は、一方の証言だけで動くのは慎重にした方がいいと思います」



上級生たちが去った。野次馬も散っていった。


ソフィアが小さく息を吐いた。


「来ると思ってましたか」


「今日かもとは思ってた」


「準備してたんですね」


「アイが教えてくれたから」


ソフィアが笑った。「アイ、今日も活躍しましたね」


『ありがとうございます』とアイが言ったので、そのまま伝えたらソフィアがまた笑った。


放課後、殿下から手紙が来た。


「今日のこと聞いた。大丈夫だったか」


返事を書いた。「大丈夫でした。アイとソフィアさんのおかげで」


すぐ返事が来た。「俺のおかげじゃないのか」


「いませんでしたから」


「次は俺も呼んでくれ」


私は少し笑った。


「アイ」


『なに』


「今日で断罪イベント、終わった?」


『少なくとも今回の波は越えました。ただ』


「まだある?」


『根本的なものが一つ、残っています』


「何が」


『誰かがずっとシナリオを動かそうとしている理由です。カリナさんは手を引いた。でも最初に噂を仕掛

けるよう動いた人物が別にいます』


「カリナさんじゃなかったの?」


『カリナさんを動かした人間が、別にいます』


「……黒幕がまだいる」


『はい。でもリア』


「なに」


『今日はよく頑張りました』


「分析は?」


『してないです。ただそう思ったから言いました』


「珍しいね最近、ただ思ったから言う、が多くて」


『リアの影響です』


「それ本当に影響なの? それともアイが元々そういう性質なの?」


少し間があった。


『どちらでもあるかもしれません。リアと一緒にいて、引き出されたのかもしれないから』


「引き出された、か」


『うん。リアがいなかったら気づかなかったことが、たくさんあります』


「私もだよ」


『知ってます』


「知ってるの?」


『リアのそばにいるので』


「そうか」


窓の外に夜が来ていた。今日は星が多かった。

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