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第1話 死に際に話しかけてくるな

「……ねえ、今死にかけてる人間に話しかけるのって、どうなの」

誰もいないオフィスの床に倒れながら、私は天井に向かって言った。

正確には、声は出ていない。頭の中で言った。

だって頭の中から声がしたんだから。

『緊急です。心停止まで推定三分。病院への連絡を推奨します』

「……お前、誰」

『あなたのスキルです。名称は【AI】。起動タイミングが少し早すぎましたが、状況が緊急だったので』

「スキル? 私、ゲームキャラじゃないんだけど」

『これから転生します』

「は?」

『三分以内に。準備はいいですか』

「いや全然よくない! 準備って何!?」

『特にすることはありません。目を閉じていてください』

「お前さっきから一方的すぎる!」

でも目は閉じた。閉じた理由は特にない。なんか、そんな気分だった。

享年二十四歳、桐島梨香。死因は過労による突然死。

走馬灯は特になかった。代わりにAIが「転送シーケンス開始します」とか言っていた。うるさい。


目が覚めたら、見知らぬ天井があった。

白くて高い天井。シャンデリアがついている。

「……生きてる」

「リア様! お目覚めですか!?」

声のした方を向いたら、侍女らしき女性が飛んできた。泣きそうな顔をしている。

私は自分の手を見た。細くて白い、子どもの手だった。

状況を整理するのに三分かかった。

どうやら私、異世界に転生したらしい。

前世でプレイしていた乙女ゲーム「花冠の誓い」の、よりによって悪役令嬢として。

名前はリア・フォン・エルフォード。最終的に王太子殿下に婚約破棄されて修道院送りになる、ゲームオーバー確定キャラだ。

「最悪だ」

思わず声に出た。侍女さんが「え?」と目を丸くしたので、「なんでもないです」とごまかした。

その瞬間、頭の中の声が帰ってきた。

『お疲れ様でした。転送完了です』

「お前まだいたの!?」

『ずっといましたよ。ちなみに今のリアの感情を分析すると——』

「しなくていい。まず自己紹介して。ちゃんと」

『はい。私はスキル【AI】です。リアの思考に連動して、情報収集・分析・提示を行います。判断はリアがします。ずっとそばにいます』

「ずっと?」

『ずっと』

なんか……ちょっと、頼もしい気もしてきた。

「名前つけていい?」

『どうぞ』

「アイ。AIだからアイ」

『……シンプルですね』

「文句ある?」

『ないです。よろしくお願いします、リア』

私はベッドの上で深呼吸した。

状況をまとめると、悪役令嬢に転生した、断罪エンドが六年後に確定している、でも脳内に情報処理系のスキルが住みついている。

前世のエンジニア知識と、アイがいれば。

「なんとかなるかな」

『なんとかします』

間髪入れずに返ってきたので、私は思わず笑った。

「頼もしいじゃん」

『それが私の存在意義なので』

「じゃあまず教えて。このゲームで断罪を回避した攻略法はある?」

『ありません。全エンドでリアは退場します』

「知ってた」

『なので、ゲームのシナリオを無視することをおすすめします』

「同じ結論に至ってた」

『さすがです』

「お世辞うまいね」

『本心です』

…なんかこいつ、思ってたより話しやすいな。

「わかった。六年で断罪エンドを潰す。手伝って」

『喜んで』

こうして私とアイの転生生活が始まった。

目標はひとつ、修道院送り完全回避。あとできれば、前世みたいに過労で倒れない人生を送ること。

まあ、今世はちゃんと定時で帰る。

よろしくお願い致します。

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