第3話 オレの解答! (1)
オレはその場から走って逃げてしまいたかった。でも、それとは裏腹に、じっと隠れるように息を潜めて事の顛末を見ていた。
女子生徒の緊張で震える声が聞こえた。
「あのっ、杉崎先生…、い、いつもありがとうございます。えっと、…す、好きです!これ」
そう言って先生に差し出した、小さな箱のピンク色のリボンが跳ねた。
震える手の先の箱は、受け取られないまま震えていた。
「…あー、申し訳ない。そういうのは受け取れないんだ」
困った顔をして、でも当たり前のように断った。
「気、気持ちだけでも伝えたくて…」
弱々しく小さな箱は引っ込められた。
「気持ち、ありがとう。でも、それも受け取れないから。ごめんな」
杉崎先生は女子生徒の目をしっかり見てそう言うと、すぐにそこから立ち去った。
2月14日、浮き足立つ生徒の喧騒の中、オレも先生も、その女子生徒もきっと無音の中だった。
晃惟先生が断ってほっとした一方で、女子生徒に自分自身を重ねて見てしまったせいで、心が痛かった。
もし彼女のように声に出していたら、あっさりと振られてしまう当たり前の現実を突きつけられたようだった。
先生に質問するつもりで持っていたノートは、呆然とした手の先から落ちてしまいそうだった。
その日、オレのロッカーに押し込められていた送り主不明のチョコレートの箱はやけに重く感じて、どうするべきか考えあぐねた。




