第2話 解けない恋の方程式 (4)
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補習が終わると数学準備室で約束のケーキが振る舞われることになった。
普通の教室の半分にも満たない部屋は雑然としていた。ダンボールが積んであったり、古そうな印刷物や黒板用定規、ホワイトボードなんて物もあった。
真ん中に6人くらいで囲めそうなビジネスライクなテーブルと古い学生用の椅子がチグハグな高さのまま置いてあった。
その壁に新しいと思われる肖像画が飾られていた。油絵で描かれた人物は杉崎先生だった...。
その絵は丁寧に描かれているのが分かった。
きっと、描いた人は杉崎先生に恋をしていたんじゃないかと直感的に思った。
それを見た瞬間、胸の奥に、小さくチクリと棘のようなものが刺さった。
『先生を好きだった誰かが、ここにもいたんだ』
先生は誰かの「特別」になったことがあったんだろうか…。
「あー、その絵良いだろう?去年の卒業生の子がプレゼントしてくれたんだ」
紙皿にサンタが乗せられたショートケーキを出しながら先生が言った。
「センセー人たらしだな〜」
「人聞き悪いこと言うなよ!ちゃんと生徒と真面目に向き合ってるってことだよ」
「それだからだと思うよー…」
先生の心の中でのオレの居場所も生徒Aなんだろうかと思うとやるせなかった。
荷物を取りに教室へ行っていた2人も準備室へやって来た。
「ほれほれ、ケーキも準備出来たし食べるか」
先生は笑顔で迎えた。
「ちょっと待った!折角だからみんなで写真撮ろうぜ!」
きっと中学の頃のオレだったら、こんな提案はしなかったし、その前に撮られるのもキライだった。
オレは携帯電話をインカメラにして4人並んで写真を撮る。
先生と写真を撮るのは2度目だった。1度目は春に撮ったクラス写真。豆粒みたいに小さい顔は、それぞれ右と左バラバラに写っていた。
みんな1枚の写真に収まろうとギュッと体を寄せて集まった。オレの隣が先生で、先生は両手を広げてオレともう1人の奴の背中にガシッと手を回した。
オレはそっと晃惟先生の腰に手を回した。思ったよりも締まった男らしい腰周りに危なく力を込めてしまいそうだった。
先生とのこの0cmの距離が果てしなく熱かった。
そして、先生の横で食べたクリスマスケーキは切ない甘さが口に残った──。




