第2話 解けない恋の方程式 (2)
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2学期に入り、オレは杉崎先生の授業には特に力を入れるようになった。
「はーい、この3問はちょっと応用なんだけど、出来るって人自主的に出て来て黒板で解いてくれる?」
オレはもう迷いもなく立ち上がって黒板に向かう。
1問目をスラスラと解いて、他に解きに来るヤツもいないから3問全部解いて席に戻った。
「葉山ありがとう。どれも正解です。でもこの解き方だと先行ってしまってるんだわ。今回の単元で習う解き方でお願いしたかったな。まあ、でも兎に角、葉山には色んな引き出しあるってことだね」
そう言って途中式を今回の単元に合わせて書き出していった。
席に戻ると隣のヤツにちゃちゃを入れられた。
「葉山急に数学やる気出た?杉崎のこと好きになっちゃった?」
「アホかお前は!8歳も上で、それも男だぞ?何でそんな短絡的な発想しか出来ないんだよ」
オレは平静を装って答えた。
「えー、俺の勘結構当たるんだけどな〜。まぁ、そうだよなー。…冗談冗談!聞き流せや」
オレはやり過ごすことが出来て安堵した。
そして、この気持ちは隠さなければと一段と思った。
下手したら周りからただ面白半分に扱われかねない。それを人伝に先生の耳に入るとか冗談じゃない。
そんな風に思ってから、以前みたいに杉崎先生に絡むことも出来なくなっていった。
それからの2学期は淡々と過ぎていき、時間の流れが遅く感じた。
オレンジ色の髪色は色褪せて見えた。
いつ頭をくしゃりと撫でられてもいいように使わないでいたちょっとベタ付くヘアワックス。それを手に取ってはやっぱりまだ…と思って、手を拭って流した。
オレは先生と距離を取っていても、杉崎先生の数学のテストで手を抜くようなことはしなくなった。
冬の補習はもう出る必要もなかった。
しかし、2学期成績上位3位以内に入った事で、杉崎先生から声が掛かった。
「成績上位の子らにお願いしてるんだけど、今回1年生の補習持つことになってな、赤点の子多かったから、冬の補習の手伝いしてくれんかな?講師として。こういうのも良い経験になると思うんだよ。どう、葉山?」
オレは少し考えてるフリをした。
「あー、そうだよな。クリスマスイブやしな、予定あったらいいんだ。それで2人には断られてるしな。ワハハ!」
「先生こそ、予定ないの?去年も思ったけどさ」
久しぶりに軽口を叩いた。
「俺か?こんな先生バカ、出会いも何も無いわ」
「……オレが嫁に貰ってやるよ」
「あはははっ!俺が嫁側なんか!?お前はホントに面白いヤツだな!まあ、講師やってくれたら、皆にケーキくらい振舞ってやるわ」
「なら、寂しい者同士ケーキ食ってやってもいいよ」
晃惟先生の何でもない笑顔が心に刺さった。
でも、オレも一緒に笑った。




