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第1話 片想いの条件式 (3)

*****

 この日からオレは点数のためだけではなく、先生を追うように勉強に力を入れ、あっという間に数学は得意教科になった。

 

 次の年、風の噂で杉崎先生は△△高校の数学教師になったと知った。オレはその学校を目標に勉強し、合格したのだった。


 オレは杉崎先生に認知してもらいたくて、目立つ髪色にしたり生意気に接した。

 中学の友達に会っても気付かれないくらい別人のようになっていた。

 

 そしてオレは杉崎先生との時間が欲しくて、補習を受けるような点数を取っていた。

 


1日目の補習は終わった。

 

「センセーもさ、もう帰る?」

 

「おう、今日は補習のためだけに来たからな」

 

「駅まで一緒に帰ろ!」


「お、説教でもされたいんか?」

  

「…まぁそんなとこ!行こうぜ」

 

「『行こうぜ』って、葉山、まずは口の利き方から教えるようだな」

 

「…じゃぁ、色々教えて」

オレは笑って先に教室を出た。

 

 

 

*****

  

 教員用の下駄箱で待った。4時過ぎでは暑さは衰えず、直ぐに汗ばむのが分かった。

 直ぐに杉崎先生は出てきた。

 

「…おお!行こかー」

補習中とは違って力が抜けた感じだった。 


 先生は歩きながら自分が気になっている『数学上の未解決問題』について話していた。


 ただの生徒と先生の間に急にロマンチックな雰囲気など出るわけもなかった。それに、先生の影響でオレも興味があった。

 

 オレにとっては好きな人と学校の帰り道、肩を並べて歩くだけで、青春のひとコマとして充分だと思った。 

 

 

コンビニの前を通った。

 

「センセ、ちょっとアイス食いたい。すぐ買ってくるから待ってて」

  

「おう、行ってこい」


オレは急いでソフトクリームを買ってきた。

 

「アイスって、ソフトクリームだったのか。こんな暑いと早く食べないと溶けるな」

 

 オレは食べ始めて、先生はそれを微笑んで見ていた。


「…あ、そこ垂れてきてるぞ」 

 

「え?どこ?舐めて!」



 そう言ってオレはソフトクリームを先生に向けた。

 

「ああ、ああ…」

先生は反射的に舐めてくれた。

 

「ふふふ、美味しいだろ、ここのソフトクリーム?」


「確かに美味しいな、先生やってたら買い食いして帰らないから知らなかったよ」


 オレはそこから当たり前のように先生と交互にソフトクリームを食べた。

 今まで食べたソフトクリームの中で、いや、食べた物の中で1番美味しいと思った。

 

「葉山、いい笑顔して食ってるな。前の真面目で聡明そうなキリッとした感じも良かったけど、こっちの笑顔も良いな。まぁ、強いて言えば、中学生の時の方が数学出来てたな、あははは」


オレは、驚いて息が止まった。


「先生、オレのこと分かってたの?」

 

「おお、1年の時教科担当になった時すぐ分かったよ。お前自己紹介の時におでこ指で撫でてて、『あ!考えてる時のあの子の癖だ』って思ったよ」

 

「…マジかーー…!何でずっと気付いてるの言ってくれなかったんですか?」

 

「…いやぁ、…高校デビューに水差したら悪いなと思ってな、ははは!」


「…オレめちゃカッコわるぅーー」

オレは項垂うなたれた。


「まあ、可愛い教え子を守ってやったと思って!」

 

そう言って先生はオレの頭を撫でた。


オレは恥ずかしさと、初めて触れる先生の大きな手が嬉しくて、心臓はドキドキし、全身がカアッと熱くなった。

 

「…どうしたずっと項垂れたままで…?」

 

「……うっせぇ!ほっとけ!」

 

「…なんだそれ!あはははは!…また明日から、補習がんばろーなー」

 

オレは明日からどんな顔をして会えばいいのか分からなかった。

 いや、今どんな顔をして顔を上げたらいいのかが先だ…。

 


 

───オレの夏休みの1ページには『先生×オレ=恋の熱量』の公式が発見された。

 



 

           第1話 END


第2話へつづく

          





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