第3話 オレの解答! (4)
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初日は、夕日が沈む前にはホテルに着いた。
部屋に着くと、いつもより早起きだったせいか、疲れが出て部屋の探索をする松田を横目にベッドに横になった。
そのままオレはいつの間にか寝入っていた。
「おー?葉山、大丈夫か?何か顔赤いぞ」
その声に驚いて目が開いた。そして、オレの顔を晃惟あきなり先生が覗き込み額に手を当てた。
「あっ…、と…」
オレは顔の近さに絶句した。
先生はそのままオレの額にもう一度掌を当てた。
一気に熱くなった全身と裏腹に、ヒンヤリとした先生の掌が心地よかった。
「うーん…、やっぱりちょっと熱いな。今保健室代わりにしてる部屋がいっぱいだから、先生の部屋に連れてくからなー」
「え?先生どうしてここに…」
「葉山の体調悪いかもって、松田が言いに来たんだ。よしゃ、立てるか?」
先生に促されるまま立ってみたが、足元が覚束なかった。
先生の肩に頭ももたれ掛かり、ゆっくり歩いた。
オレの好きな飾り気のない先生の薫りが、頭の芯から全身までをビリビリと震わせるように熱に変えていった。
自分の心臓の音だけがうるさかった。
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先生の部屋のベッドに横になった。
先生と部屋で2人きりと思うと、身体が熱い理由が、熱があるからなのか分からなかった。
「とりあえず熱測れ」
そう言うと、先生は持っている体温計を、羽織ったシャツに潜くぐらせて脇の下に刺した。
冷たく感じる体温計にはっとするくらいドキッとした。
ピピッピピッ
「37度8分か。このまま上がらなければ良いけどな。熱以外症状がないみたいだから風邪でも無さそうだよな」
オレの顔の高さに合わせて体温計を見つめている先生の顔が目の前にあった。
こんな近さで、先生を目の前に感じたことは初めてだと熱を帯びた頭で思った。目尻に小さなホクロがある事に初めて気付いた。
「ちょっと様子見だな。ゆっくり休め」
そう言ってオレの頭を軽くポンポンと叩いた。また子供扱いと思いながらも、安心する自分がいた。
「…センセー、そばにいて」
オレは思わず手を伸ばした。
「大丈夫、いるから。熱あると不安になるよな」
晃惟あきなり先生はその手をとってさすりながら、優しく微笑んだ。
熱が出たことさえも忘れてしまうほど、胸の奥が強く脈打った。
このまま先生を感じる時間が止まって欲しかった。
「鬼の撹乱かくらんって言葉知ってるか?…ふはは」
先生は笑いながら子供を寝かし付けるようにゆっくり布団の上からトントンした。
先生とオレはずっとずっとこの距離だ…。
それでも今は良いと思った。どんな理由でも触れられる距離にいる幸せ…。今はただ、それを噛みしめておきたかった。




