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灰色の翼をもつ天使と僕の聖戦  作者: 小田原 純


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第34話 光と闇を抱く者

キラと颯がアマテラス、シナツヒメに案内されたのは白一面の簡素な空間であった。


アマテラスから急ぐように案内されたのだ。


「申し訳ございません。私は4人以上になると全く話ができませんので」


キラと颯は深く納得した。


(神様にもその人種がいるんだな…)


シナツヒメもそこに続ける。


「私も男性があれだけ多いと拒否反応が…アマテラス様ありがとうございます」


その言葉を聞くと、神様でもなんだか人間味を感じる。


「シナツヒメ様は相当男性が苦手なんですね…」


「そうですよ!男なんて傲慢で野蛮で…関わりたくないです!」


シナツヒメは憤慨しながら語るが、どこか過去を思い出しているようにも見えた。


「分かります。確かに傲慢で野蛮な男っています。大変でしたよね…」


シナツヒメは驚き颯を見つめた。


「意外です…こう言うとそんな男だけではないと大体忠告されるんです」


中には自分で引き付けてるとも言われましたと苦笑いを浮かべて自嘲した。


「いや、そんなこと言う男もひどいですよ。あなたの傷ついた事実を無視している」


シナツヒメは目が潤みそうになったが何とか堪えた。


心が軽くなった感覚というものはこれなんだと思えた瞬間だった。


「…優しいんですね、あなたは。客観的にものが見れるから人を傷つけない言葉を選べる」


シナツヒメは布で目元を押さえて颯を見つめた。


「あなたの大切な人を救えるよう力を与えます。しっかり精進してください!」


シナツヒメの自信に満ちた笑顔に颯は心を奪われた。


「シナツヒメ様、笑うと可愛いな…」


その瞬間シナツヒメの眉が吊り上がり最初の表情に戻った。


「前言撤回です…容赦なく性根から正さないといけませんね」


その光景を苦笑いしながらも見守るキラとアマテラスであった。



アマテラスはキラの方を向いて語りかけた。

「では私もキラさんに光の力を授けます。ですが……」


一息置き、静かにキラを見つめる。


「何か、心残りになっていることがあるのでは?」


キラの心臓がどくりと跳ねた。

その視線から逃げることなく、深く頷く。


「僕は……怒りの感情も受け入れると決心しました。でも……それって今までの父の教えを否定することになるんじゃないかって、不安なんです……」


父がもう目の前に現れることはない。

否定されることもないはずだ。


それでも、胸の奥に残る迷いは消えなかった。


アマテラスは急かすことなく、ゆっくりと頷いた。


「親から受け継いだ教えも、尊いものです。ですが――それに縛られ続ける必要はありません」


キラは息を呑み、言葉を漏らすまいと続きを待つ。


「光だけでは、世界は成り立ちません」


アマテラスは柔らかく微笑んだ。


「闇があるからこそ、人は光を知ることができるのです」


その言葉にキラは目を見開いた。


「怒り、悲しみ、憎しみ――それらを闇として切り捨てるのは簡単です。ですが、それらもまたあなたを形作る大切な感情の一部」


アマテラスはそっと胸元に手を添える。


「闇を知り、受け入れた者こそ……本当の意味で光を理解できます」


キラの胸に、その言葉が静かに染み込んでいった。


そしてアマテラスは、ふっといたずらっぽく笑った。


「……そもそも私、光の神ですが引きこもりですし」


「え?」


「天岩戸に閉じこもった前科持ちです。いわば闇属性です。光の神なのにアンバランスでしょう?」


神様らしからぬ告白に、キラは思わず吹き出した。


「た、確かにそうですね……」


「なので大丈夫です。多少矛盾しているくらいの方が、人も神も魅力的なのですよ」


キラはその言葉に目を伏せ、小さく笑った。


胸の奥に張りついていた不安が、少しずつほどけていくのを感じる。


父の教えを否定するわけじゃない。


父がくれた優しさを受け継ぎながら、自分なりの答えを見つければいいのだ。


そう思えた瞬間だった。


キラは真っ直ぐにアマテラスを見つめた。


「……ありがとうございます。僕、やっと分かりました」


その瞳に迷いはもうなかった。


「優しいだけじゃ誰も守れない。怒りも悲しみも受け入れて……全部抱えたまま前に進みます」


アマテラスは満足そうに頷く。


「ええ。それでこそ、あなたです」


彼女はそっとキラの額に手をかざした。


「あなたに、光の加護を授けましょう」


眩い光が空間を包み込み、キラの身体を優しく照らした。


不思議と胸が熱い。


けれどそれは苦しさではなく、確かな力が宿る感覚だった。


「あなたならきっと――光も闇も抱え、誰かを導ける人になれます」


その言葉を胸に刻みながら、キラは静かに頷いた。

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