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灰色の翼をもつ天使と僕の聖戦  作者: 小田原 純


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第27話 断絶の門出

スラム街はもはや「スラム」と呼ばれる程の荒廃した雰囲気は薄れつつあった。

かつての住民たちは何をしたら良いか分からずに喧嘩に明け暮れていた。

そこに知識を手に入れたミズキが導くことで自身を肯定し役割を認識することで、自分に自信がつき他者にも優しくなる循環が生まれた。


しかし、そんな幸せも長くは続かなかったのであった。


ミズキは見覚えのあるカッチリした白軍服の3人組に出くわした。

「お前たち…何しに来やがった!?」

ミズキは水の刃を掲げて臨戦態勢に入った。

「武器をどうか下げてください、ミズキさん。私たちはあなたを戦天使として迎えるためにここまで探しに来ました。我々に力を貸して悪魔を討って下さい」

以前の扱いとは逆だった。

しかし急なへりくだりの態度は不気味さを匂わせた。

「お母さんをあんな風に奪ったあんたたちの手下になるなんてまっぴらごめんだね。今言葉で言ってる間に帰りな」

ミズキは毅然と返したが男は冷静に淡々と話す。

「なるほど、お断りですか?あなたを引き留める要因は…ここなんですね」

男が見つめる目先には灰色の翼の子どもたちが何も知らずに遊んでいた。

その行動から不吉な場面がミズキの脳裏に浮かんだ。

ここの子どもたちだけでなく、この場所で守ってくれる居場所も守らなければ、と。

クロガネもいるし皆で戦うことも可能だが、そんな日々がずっと続く可能性もある。

自分自身の身を引くだけでこの場所が守られるのなら…

笑顔で遊んでた子どもたちだが、ミズキを見つけて駆け寄ってくる。しかしミズキの不安そうな表情に釣られて子供たちの表情にも陰りが出てきた。

その変化を見たミズキは静かに決意をした。

「分かった、あんた達について行くよ。ただその前に準備だけさせてくれ」

男たちはそれはもちろんと了承した。

ミズキの中でもう行き先は決まっていた。

まず透の家に行くが不在だった。仕方なく「戦天使の軍に行く」と書き置きをした。

最後にミズキはクロガネに会う。

「クロガネ、私はここを出る。…皆をよろしくな」

クロガネは突然の別れに頭が追いつかないと混乱したが、白軍服の3人を見て状況を把握した。

相手に分からないようにひそひそと話をする。

「ミズキ…お前と俺なら倒せそうだぞ」

「ダメだ!私たちがいる時なら良いけど、いない時を見図られたら…それにずっとここに侵攻させたくない。あの子達の唯一の居場所なんだから…」

クロガネは自分の力不足を憂いて壁を殴った。

「お前一人で背負うこともないだろ?」

ミズキは押しとどまり、自分の力不足で連れ去られた母を思い出す。

もうあんな思いは二度とごめんだ。

「私はここが好きなんだ。だから、私の身柄ひとつで守れるのなら安いもんだ…たまに帰ってくるから…」

ミズキはその場を駆け足で去っていった。

これ以上話して、残って良いと優しくされたら決意が揺らいでしまう。

その証拠に涙が浮かびそうになったが必死でミズキは堪えた。


白軍服の男たちのもとに何事もなかったかのように戻った。

「待たせたな。行こう」

少し離れた後ろで自分の名前を呼ぶ声がした。

「ミズキ!ここはお前の居場所でもある。だから、いつでも帰って来い!」

クロガネは叫んだ。

しかしミズキは振り返ることなく、右手だけ軽く上げた。


――ミズキが目を覚ますと天蓋が目に入る。


「そうか、今は魔界にいるんだった…長い夢だったな…」

随分長いこと眠っていたような気がした。


目覚めた頭から1つ重要なことを思い出した。

「書庫を探そう。そしてもしかしたら、アイリス様もいるかもしれない…」


ミズキが部屋を後にすると老執事が穏やかに尋ねた。


「何かお探ししますか?」

「ルシエルが言っていた書庫を、教えてほしい」

「かしこまりました。ご案内致します」

城の中では老執事とミズキの足音だけが響いた。

父と名乗る男は天界にどんな思いを持ったのか、そこを知る必要があるとミズキは静かに決心した。

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