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灰色の翼をもつ天使と僕の聖戦  作者: 小田原 純


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第23話 灰色の翼の理由

(あなたは生きぬいて……ミズキ……)


その声に、ミズキははっと目を覚ました。


「……お母さん……!?」


頬を伝う涙に気づき、慌てて拭う。視界に入ったのは、見慣れない天蓋付きのベッドと、柔らかな光に包まれた天井だった。


身を起こそうとして、ミズキは自分が着ているネグリジェに気づく。


「何だこれは?私の服はどこいった?」


ルシエルに敗れ、囚われたのだと思っていた。だが監禁にしては、あまりにも――居心地がいい。


「あら、目覚めたのね」


振り向くと、そこには悪魔ザガンが立っていた。

突然の悪魔の登場にミズキは構えた。

しかし、ザガンは攻撃をするでなく穏やかに話し続けた。


「着替えは私じゃなくて女の使い魔がやったから、そこは安心してね。そのネグリジェは私のおすすめよ。寝心地よかったでしょ?」

(おすすめのネグリジェをもらった…だと?)


思考が追いつかないまま、今度はマルフォスが顔を出す。

「おや、目覚めましたか?どんな本が好きです? 体が動かない間の暇つぶしにどうぞ」

(待合室の気遣いみたいだ…)

悪魔がどんな本を読むのか気になって見ようとすると、アンドラスが勢いよくやって来た。

「お、起きたか!体慣らしの組手なら付き合うぜ!」

「お前は違うな。自分がやりたいだけだろ」

前まで戦ってた相手なのに、奇襲どころか彼らなりのおもてなしをされてるのは何故だ?


混乱の極みに達したところで礼儀正しいノック音が響く。


「ミズキ様。ルシエル様がお呼びです。ご案内いたしますのでご同行ください」

老紳士の執事が無表情で立っていた。


ルシエル、ここに連れてきた張本人であり撃つべき最大の敵。

警戒しながら辿り着いた先で、ルシエルは満足そうに玉座に腰掛けて待ち構えていた。


「よく休めたか。我らの魔界にようこそ。歓迎するよ」

『歓迎』という言葉に自分は敵と認識されるには力不足なのかとミズキは怒りをあらわにした。

「…舐めやがって。私はお前を倒してアイリス様を助けるんだ!」

そして手に水の刃を構えた。

しかし、一瞬、床に縫い止められるような重圧がかかり、ミズキは歯を食いしばった。

「まあ落ち着け。それに私はミズキと戦うつもりはない。一つ提案をしたいのだ…天界を改革するためにお前は私と共に天界と戦え、ミズキ」

ミズキはその言葉をもちろん一掃する。

「お断りだ。天界は上はムカつくが、私を救ってくれた人たちが天界にいる。そこを守るのが私の使命だ。お前たち悪魔に壊させやしない!」

「まあそう言うとは思っていた。しかしお前の母は天界に追われて離れ離れになったのだろう?」

ミズキは自分の過去を言い当てられてゾクリとした。

「何故お前がそんな事を知っている…何者なんだ?」

ルシエルは微かに目を細めた。


「私はお前の父親だからだ。カンナ…お前の母親の仇でもある天界への復讐なんだ」


ミズキは再び態勢が崩れ落ちた。

「……嘘だろ。私のこの灰色の翼は悪魔の血が流れてる証…」

灰色の翼を憎しみをこめて握りしめて、ルシエルを睨みつける。

「お前がお母さんを身ごもらせたから天界に追われてたってわけか…私が悪魔と天使の混血だから…私のせい…」

混乱して、ミズキは目の前の男を撃つべきか、撃たれるのは自分なのか思考の沼に嵌っていた。

その様子を見てルシエルは哀れみを持って見つつも淡々と続けた。

「まあそう考えるのも無理はない。部屋に戻って考えるといい。そうそう。私の書庫は自由に出入りしても構わないからな」


再び執事が先程の部屋に案内し、部屋に戻った。案内される途中で書庫も見つけた。


だがミズキは先程受けた真実の重さに身体が動かなかった。


「天使と悪魔の混血で灰色の翼の天使か…そりゃあ天界も追うよなぁ」


しかし母は完全に被害者で追う必要はなくむしろ保護する対象だったのではないのか?

もう一つの疑問は、張本人のルシエルが母の名前を知っていたことも引っかかる。


(私は討つべき敵を見誤ってるのか…?)


ミズキは目を閉じて考えることにしたが疲れからかそのまま眠りに入ってしまった。


瞼の裏には幼いミズキと母の笑顔が映っていた。


(続)


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