表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰色の翼をもつ天使と僕の聖戦  作者: 小田原 純


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/28

第15話 ミズキ、呼び戻す声

烈也と颯がミズキの姿を見つけたが様子に違和感を感じた。

灰色の空がその様子をより強調させる。


「アスモデウス様に捧げよ…天使を倒す…」


そう呟くとミズキはあっという間に間合いを詰めて烈也と颯に奇襲を仕掛ける。

水流が刃となり迫ったが烈也も颯も素早く適応した。


「やすやすと操られてんじゃねえよ」

「幻術を使うことは聞いてたし、今回は本番の戦いてとこだな」

軽口を叩きながらも、颯と同時に横へ跳ぶ。連携は完璧で、奇襲を受けたはずなのに落ち着いている。


物陰で様子をうかがっていたアスモデウスは眉をひそめる。

「なぜだ?操られた仲間を前に、ここまで冷静でいられる?」


そこへキラと大地が駆け込んでくる。

「ミズキ、ほんとに操られてるの……?」

「迷ってる顔じゃない。完全にスイッチが切り替わってる」

 4人は無言でうなずく。敵わないと分かりつつも、隊列が自然に整う。


 ミズキの足元が揺らぎ、水が一気に収束する。

「アクア・スラッシュ!」

 細く鋭い水の刃が、鞭のような速度で颯へ襲いかかった。


「来いよ!」

 颯は風をまとい、腕を振り抜く。

「ウィンド・カッター!」

 風の刃が交差し、水流の刃の軌道をそらす。

 しかしミズキの水流は弾力のある生き物のように形を変え、烈也へ跳ね返った。


「颯、返ってきてんぞ!!」

 烈也は拳に炎を集中させる。

「紅蓮衝!」

 拳が地面を打ち、爆ぜる炎がミズキの足元を弾き上げた。

 水と炎の蒸気がしぶきをあげ、ミズキの体勢がふらつく。


 だが彼女はすぐに両手を広げ、水の旋回を作る。

「アクア・プリズン!」

 四方から水が圧縮され、烈也を閉じ込めようと迫る。


「させない!」

 大地が拳を地面に叩きつけ、魔法陣が走る。

「ロック・ガーディアン!」

 地面が隆起し、烈也の前に巨大な岩壁が形成された。

 水がぶつかり、激しい水蒸気が弾ける。


「烈也、下がれ!」

 大地が叫ぶのと同時に、キラが前に出る。

 手のひらには柔らかな光が揺れ、ミズキをまっすぐ見つめていた。


「ミズキ……これでも届かないのなら――」

 光が深く輝いた。


「ルミナス・スレッド!」

 細い光が糸のように走り、ミズキの瞳へ伸びていく。

 ミズキは反射的に水の壁を生成する。


「――颯くん、お願い!」

「任せろ!」


 颯は地を蹴り、風を集中させる。

「スカイ・ピアサー!」

 突風が光糸を押し出し、水の壁に風穴を開けた。

 その瞬間、光がミズキの視界へ飛び込む。


「っ……」

 ミズキの瞳から闇がゆらりと揺れ、足元の水が崩れるように沈んでいく。


 呼吸が震え、ミズキの表情に微かな人の色が戻る。


「……みんな……?」

 キラがその場で膝をつき、胸を押さえる。

「やっと……届いたよ……ミズキ……」


 だが、静けさは束の間しか続かなかった。

 空間そのものがうねり、重たい悪寒が落ちてきた――。


 アスモデウスが姿を現した。

「よくここまで追い詰めた。だが、ミズキは渡さない。一緒に付いて来てもらう」

 闇の鎖が伸び、ミズキを縛ろうとする。しかし、

「……させない!アクア・プリズン!」

 ミズキの手から水があふれ、アスモデウスを水の空間に閉じ込めた。

「ミズキ…まだ術中にはまっていたはずでは…」


 ミズキは迷いを吹っ切りアスモデウスをまっすぐに見つめて言葉を紡いだ。

「アスモデウス…いや、ハル!前も今も私を傷つけないようにしているだろ」

アスモデウスは戸惑う表情をしたが

「なぜそう思う?我は淫魔だから女性には優しいのさ」

「違う!完全に悪魔になっているなら私も叩きのめすはず。しかし、前も攻撃はされず彼らを鍛えろと導いた」

声が震え、ミズキは一歩踏み出す。

「少しでもあなたの意思があるなら戻って来いよ……」

異端のミズキを偏見なく導き、大切な存在と認めてくれた数少ない1人。

大切な人を私は今度は守っていきたい。

「好きだ…ハル!あなたが好き」

ミズキは水の壁越しにアスモデウスに口づけをした。


 その一言で、アスモデウスの瞳が揺れた。闇がひび割れ、黒煙のように散っていく。

 ミズキがそっと抱きしめると、アスモデウスの姿はハルへと戻った。



「ミズキ……ここまでよくやったな。助けてくれて、ありがとう」


抱きしめながら、ハルは思い出していた。

初めて会ったあの日――灰色の翼で必死に立ち向かってきた、あのまっすぐな瞳。

折れそうで折れない、強い意志。


そうだ。俺はあの瞬間から惹かれていたんだ。

無茶をしてでも守りたいと思ったあの気持ちは、やっぱり間違いじゃなかった。


ハルはそっと腕に力を込め、ミズキを抱きしめ返した。


4人はその光景を静かに見守っていた。

ただひとり――颯だけは、気づかぬうちに大粒の涙を流していた。それでも目をそらさなかった。


烈也がぼそっと囁く。

「……特別に黙っててやるよ」

「うるせえ……これで良いんだよ……」


その瞬間だった。


空間が、音を立てて裂けた。


黒く圧縮された魔力の塊――まるで隕石のような闇の弾丸が、一直線にハルへと迫る。


「ハル!!」


ミズキが飛び出す。

次の瞬間、轟音。

衝撃波が爆ぜ、地面が砕け、光と闇が弾け飛んだ。


煙が晴れたとき、ハルの前に立っていたミズキは――

翼も服もぼろぼろに裂け、血を滲ませながら、ゆっくりと崩れ落ちた。


「ミズキ! ミズキ、しっかりしろ!!」


震える腕で抱き上げたハルの胸に、微笑が触れる。


「……良かった……今度は……お前を守れた……」


その言葉を最後に、ミズキの瞳が静かに閉じた。


ハルの声が、空気を切り裂くように響く。


「ミズキ!! 目を開けろ……頼むから!!」


虚無を踏みつけるような、冷たい声が落ちてきた。


「裏切り者に制裁を与えたつもりだったが……なるほど。

お前が勝手に身を差し出してくれたか。都合がいい」


闇の裂け目から姿を現す、魔界の長――ルシエル。


「……ルシエル……!!」


ハルの瞳が、憎悪で燃え上がった。


(続)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ