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灰色の翼をもつ天使と僕の聖戦  作者: 小田原 純


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14/28

番外編小話 サブスクの履歴にはご注意

これはミズキ達が修行をする前の日常である。


ミズキの日課は透の隣で人間界の映像作品を見ることだ。

かつて天界でも、透が持ち込んだ書物を読みこんだ。その中でも『鉄腕アトム』『火の鳥』——どちらも、神の創造と人の矛盾を描く物語だ。


「手塚治虫先生は……素晴らしい。」

画面を見つめるミズキの目が、まるで光を宿したように潤んでいた。

「これだけの人格者なんだから、きっと天界にいらっしゃるだろう。サインもらえるかな…」

「そうだな、天界でも漫画を描いてたりしてな」

こうして他愛ない話をしているとミズキも普通の少女のようだ。


透は笑いながら、前に流した動画サイトの履歴を思い出した。

あれは……たしか、セーラームーンとベルサイユのばら特集。ミズキの“男装女子設定”を磨くためだった。


「この年代の作品はすごいな……ええと、候補にあるのは——『まいっちんぐマチコ先生』? 見てみよう!」

「え!?何でそれがあるんだ!?」


——嫌な予感しかしなかった。

ミズキは潔癖だろうから、悪魔を狩るような蔑んだ目でこれから俺は見られるかもしれないと透は覚悟した。


案の定、五分後には天界の天使が固まっていた。


「これは……なんという衝撃的な……!」


もう終わったと透は悟りを開いた顔をした。

しかし、ミズキが続けた言葉は意外なものだった。


「しかし、生徒が何をしても受け入れるマチコの器の大きさ。あんな寛容な人間が増えれば、争いも減るんじゃないか。…やるじゃないか、マチコ。」


「そ、そうか。そいつは良かったな…」


透は笑うしかなかった。


「人間界の文化作品は素晴らしい!手塚治虫大先生は既に有名だが、マチコ先生もあいつら知ってるだろうか?」

「やめろ、ミズキ!あいつらには話さないほうが良い。…選ばれた者しか見られない希少な作品だからだ」

ミズキは雷に打たれたように驚いた。

「マチコはそんなにすごい作品なんだ…人間界の作品、もっと見れるよう私も精進しなければ!」


「課金をした者しか見られない」作品だから選ばれた者しか見られないは間違っていないと透は自分に言い聞かせた。


——その夜、透は静かにサブスクの履歴を全削除した。

天使の教育は、いつだって命がけである。


そして、ミズキがやらかしてしまった未来のことも透はまだ知らない。

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