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灰色の翼をもつ天使と僕の聖戦  作者: 小田原 純


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第12話 山の修行とギンリョウソウ

次の日の朝、全員が山のふもとに集合した。

空気はひんやりとして、まだ鳥の声が遠い。


「よし。お前たちは飛んで私を探しに来たと思うが、今日は駆け上がって目的地まで行くぞ。

その登り具合で修行の裁量を決めよう」


ミズキの声が山に響いた。

キラが首をかしげる。


「山で魔法の修行ってして大丈夫なのかな? 一般の人に見つかったりしたら……」


「ああ、それは大丈夫だ。ここ、透が買ってる土地だから。人も来ない」


ミズキ以外の全員が一瞬で顔を見合わせた。

(透って……何者なんだ……?)


「自分でキャンプしたりDIYしたいんだと。そうだ、修行終わりに薪も作ってって言ってた」

「子どものおつかいかよ!」


烈也のツッコミが山に響き、鳥たちが一斉に飛び立った。

どうやら“ツッコミ担当”の座は、完全に彼に定着したらしい。


「最近ノリいいね、烈也くん」

「放っとけ!」

烈也は顔を赤くしてそっぽを向いた。


やがて登りが始まる。

その厳しさは、じわじわと体に重りを感じさせた。


「の、登りって……結構体力いるね」

「茶道とかインドア系には堪える……」


キラと颯は息を切らせながら顔を見合わせる。

烈也は生き生きと先頭を行き、大地はふと立ち止まった。


「……すごい。ギンリョウソウに出会えるとは。いい山だ」


白く透き通った花が、薄暗い森の中で静かに光を放っていた。

キラが肩越しにのぞきこむ。


「ぎ、銀……? 幽霊草ってやつじゃないの?」

「ああ。でもちゃんと生きてるんだ。光を浴びなくても、森の影でこっそり生きてる。

……よく、がんばってきたな」


大地の声はやわらかく、まるで幼子をあやすようだった。

(……これが“地”の性質なのか)と、残る三人は同時に思った。


「よし、まずは基礎からだ」

目的地に着き、ミズキの号令で修行が始まる。


颯とキラは山の斜面で腕立て伏せに挑戦していた。

「い、いち……に……さんっ……うわ、もう腕が取れる……!」

「颯くん、がんばって! ほら、あと十回!」

「鬼かお前はぁぁ!」


隣では烈也と大地が組手をしている。

烈也の拳が火花を散らし、大地は落ち着いた足運びでそれを受け流した。


「力、入りすぎ。地面の揺れが先に伝わってる」

「ちっ……そんなとこまで分かるのかよ」


ミズキが二人の間に割って入る。

「力は感情に支配される。制御できて初めて“戦える”んだ」

烈也は歯を食いしばり、大地は静かに頷いた。


休憩を挟み、岩の上でミズキが切り出す。

「お前たち、それぞれの力――“エレメント”を自覚してるか?」


キラがノートを取り出し、真剣な顔でメモを取る。

「たぶん僕は“光”。回復とか支援系が出やすい気がします」

「お前、学校の授業かよ」颯が呆れ気味に笑う。


烈也は腕を組み、「俺は“炎”。攻める方が性に合う」

大地は穏やかに微笑む。「俺は“地”。支える方が好きだし、落ち着く」

「風……だと思う。突っ走る感じがあるし」颯は頭をかいた。


ミズキは満足げに頷く。

「それぞれ自覚してるな。エレメントは身近なものだ。日常でも意識して使ってみろ」


キラが手を挙げる。

「僕、暗い中で物を探すとき、自分の光で照らすよ」

「いや、浄化の光を懐中電灯代わりかよ!」颯が即ツッコミ。


「じゃあ烈也は煙草に火を――」

「いや、煙草はやらねえ。子どもたちに悪影響だ」

(透の漫画では“悪ぶるキャラ=煙草”だったんだけどな)ミズキは心の中でそっと嘆いた。


「じゃあ颯の風は……スカートめくりとかに使うなよ!」

「そんなくだらねぇことで使うか!」

「……あれか! “まいっちんぐ”ってやつか!?」

全員がポカン。

「……忘れてくれ」

ミズキは顔を真っ赤にして岩陰にうずくまった。


空気を和ませるように、大地がぽつり。

「俺は毎朝、家の植物に話しかけてるけど……それも“地”の力なのかな」

「もう上級者だろ、それ」烈也が苦笑する。

(優しさごと包み込む“地”だな)ミズキはそっと目を細めた。


やがてミズキが立ち上がる。

「よし、実践に移ろう。ルールは単純だ。私に素手で一発でも当てたら、お前たちの勝ち」


烈也が笑う。「そんなハンデありかよ?」

「ハンデはない。この裏山は私の庭だ。地形も風の流れも、全部私の味方。

連携しない限り、誰も届かん」


その言葉と同時に、4人が一斉に動いた。

烈也の拳が火花を散らし、颯の風が唸りを上げる――が。


「烈也! お前邪魔するなよ!」

「お前こそ! 俺は右から打つつもりだったんだ!」

二人の拳がぶつかり、体勢を崩す。


一方その頃、キラと大地は目を合わせていた。

「ご、ごめんね、大地くんからどうぞ」

「いや、キラからどうぞ」

「い、いいって! どうぞ!」

「いやいや、キラが――」


ドンッ!

ミズキの蹴りが地面を裂き、二人の間に衝撃が走った。

「実際の戦場でそんな隙を見せたら、終わりだぞ」


静寂が訪れ、4人は同時に肩で息をした。


ミズキは腕を組み、ゆっくりと告げる。

「戦いは個人戦じゃない。私は一人で修行したが、お前たちは違う。

お互いを信じること、そして相手の力の理解から始めろ」


烈也が腕を組み、「連携、ねぇ……」とつぶやく。

颯もため息をついた。「そんなの、どうすりゃいいんだよ」


大地は静かに笑う。

「まずは、相手の動きを信じることから……じゃないか」


その声に、風がそっと揺れた。

五人の視線が交わる――まだぎこちなく、けれど確かな絆の光を帯びて。


(続)

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